Research Abstract |
光遅延素子やバッファメモリは,光ルーターなど,将来の高度な光信号処理に欠かせないが,現在議論されている光メモリは光回路とのモノリシック集積が難しく,高速信号に対応できない.一方,申請者が提案したフォトニック結晶導波路による群遅延素子は,微小・広帯域であり,チャープ構造により分散補償機能を内蔵する.本年度は,2種類の分散をもつ導波路A,Bで構成される方向性結合器を高効率で結合させるための構造パラメータの最適化を行い,群遅延機能の実証を目指した.導波路A,Bの導波バンド端における群速度を,ファブリ-ペロー共振間隔と,位相差検出による測定法でそれぞれ見積もり,どちらもバンド端でc/100程度の群速度を評価した.これらの導波路の幅,円孔直径を変化させ,FDTD計算で最適化した結果,結合損失を1〜2dBに抑えられることがわかった.SOI基板上に実際に素子を製作した結果,結合損失が5〜10dBの素子が得られた.導波路出射端の反射による共振のため,ファブリ-ペロー共振間隔からの群速度評価は行えなかったが,位相差検出による時間領域測定によって25nmの広帯域でc/20〜c/60が得られた.製作精度の向上により,透過スペクトル,遅延特性は均一化できる. このようなチャープ構造を導入した光遅延素子で得られる遅延について理論構築を行い,その遅延時間がチャープの始点と終点の動作点にのみ依存することを明らかにし,40GHz信号に対して約c/500,10GHz信号ではc/1000以下の群速度が得られることを見いだした.この関係は実験とおおむね一致した. また,2本の導波路の偶モードのみを使う結合導波路による遅延素子についても平行して研究を行い,分岐構造により偶モードによる伝搬と見られる透過特性を実験的に確認した. これらの成果を学会等で発表した.
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