2006 Fiscal Year Annual Research Report
高精度熱量測定法によるモルテングロビュール構造安定化機構の解明
Project/Area Number |
05J05474
|
Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
中村 成芳 長岡技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 蛋白質の熱力学的安定化機構 / モルテングロビュール / 熱測定 / シトクロムc / 分子生物物理学 |
Research Abstract |
前年度の研究により、これまで2状態転移と考えられてきた天然状態(N)〜変性状態(D)の転移に中間状態(1)が存在することが確認された。18年度は低塩濃度条件でのシトクロムcのN〜D熱転移を分光測定と各種熱量測定を用いて詳細に解析し、熱転移中間状態であるI状態の構造と熱力学的安定化機構を明らかにした。円二色性(CD)測定によりI状態は2次構造をN状態と同程度保持しているが、側鎖のパッキングなどの3次構造はN状態より壊れていることがわかった。また複数温度で溶液X線散乱測定を行ない、熱測定により評価した各状態のフラクションを用いて解析し、I状態の散乱プロファイルを推定した。I状態が球状でN状態と同程度にコンパクトであることが明らかになった。これらの結果はI状態がモルテングロビュール(MG)状態であることを示している。酸滴定熱量測定と示差走査熱量測定により、N〜MG転移の熱容量変化は0〜3kJK^<-1>mol^<-1>の範囲であることが評価された。これはN状態で内部に埋もれている疎水部分の多くがMG状態でも保持されていることを示しており、MG状態は主に疎水相互作用により安定化されていることが示唆された。低塩濃度条件でのシトクロムcの相図を作成し、pH4以上でN〜D熱転移の間にMG状態が存在することが示された。これは蛋白質分子表面の静電反発が弱い溶媒条件では低塩濃度でもMG状態が安定に存在することが示唆している。またpH4.1,低塩濃度,15℃でのN〜MG転移、N〜D転移のギブス自由エネルギー変化はそれぞれ9〜22kJmol^<-1>、41〜45kJmol^<-1>となり、低塩濃度条件でのMG状態はN状態が安定に存在する溶媒条件でD状態よりエネルギー的に安定であることが明らかになった。これはMG状態がフォールディング中間体に近いエネルギー的性質を示すことが示唆された。
|
Research Products
(1 results)