2005 Fiscal Year Annual Research Report
高精度熱量測定法によるモルテングロビュール構造安定化機構の解明
Project/Area Number |
05J05474
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
中村 成芳 長岡技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 蛋白質の立体構造安定性 / モルテングロビュール / 熱測定 / シトクロムc / 分子生物物理学 |
Research Abstract |
シトクロムcには酸性pH、高塩濃度条件で2つのモルテングロビュール状態(MG1,MG2)が存在することが示唆されていたが詳細は不明であった。今年度の研究では酸性pH、高塩濃度条件でのシトクロムcのMG1から変性状態(D)への熱転移を熱測定(IATC,DSC,PPC)と円二色性(CD)測定、X線小角散乱(SAXS)で観測した。DSC測定を用いてシトクロムcのMG状態の熱転移に伴う熱力学量変化を評価し、各温度でのモル分率を決定した。その結果MG1〜D熱転移には中間状態(MG2)が存在することが確認され、50℃付近でモル分率は最大0.35になった。CDよりMG1、MG2ともにN状態と同程度のα-ヘリックス量を保持しており、MG2の3次構造はMG1よりも壊れていることがわかった。SAXSの結果は現在解析中である。PPCより高塩濃度存在条件での部分体積はMG2,MG1,天然状態(N)の順に減少することが観測され、蛋白質構造形成に伴い疎水性残基の脱水和がおきることが示唆された。 また、これまで2状態転移と考えられてきたシトクロムcの低塩濃度条件でのN〜D熱転移をDSCで観測し、中間(I)状態の存在を明確にした。I状態のモル分率はpH4.1、70℃で最大40%となった。CDよりI状態では2次構造はN状態と同程度形成しているが、3次構造はNより壊れていることがわかった。また、SAXSよりI状態は球状でNと同程度にコンパクトであることがわかった。PPCよりI状態の部分体積はNとDの中間であり、部分的に水和した疎水コアの存在が示唆された。これらの結果よりI状態ではMG構造が形成されていることがわかった。従来シトクロムcのMG構造は高塩濃度などの特殊な条件下で観測されてきたが、本研究より、通常のフォールディング実験の条件(低塩濃度)でもMG構造が安定に存在することが明らかになった。
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