2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J05681
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小川 浩史 立命館大学, 大学院・先端総合学術研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イスラーム復興運動 / ムスリム同胞団 / エジプト:シリア / 学生運動 / ファシズム / 戦争 / 民族紛争 / パレスチナ問題 |
Research Abstract |
ムスリム同胞団の創設と同組織の歴史的な発展過程を、ハサン・アル=バンナーの生い立ちから秘密軍事部門の設置に至るまで論述している。エジプトを中心としたイスラーム地域の近代化(国民国家体系への編入過程)と、それに連関したイスラーム復興運動の暴力化(軍事組織の内在化)のプロセスを理論的に捉えなおすことで、ムスリム同胞団の秘密軍事部門の設置が学生運動の過激化と同一次元の歴史プロセスにあったことを指摘した。1928年に誕生したムスリム同胞団は、マナール派のサラフィー主義を継承し社会運動としてその思想を(主に)エジプト国内に展開した。社会の近代化に連動しつつ、学生運動や労働運動にまで活動範囲を拡大したことが既存の宗教慈善団体と決定的に異なっていた。また、出版社の資金を捻出するために株式会社を設立するなど、資本主義経済との接点も初期の段階からみられた。そして、同組織の政治化の動きは、主としてパレスチナ紛争の激化と民族主義政権の体制化の問題に関わっていた。中東イスラーム地域に沸き起こった反植民地主義的な機運が、大衆政治運動への参入を可能にしたのである。ムスリム同胞団の秘密軍事部門は「旅団」組織を中心に変容・展開したものであったが、そのことは、この地域における近代的な政治・文化現象として一般化しうる歴史プロセス、つまり、1 「近代公教育制度」の確立、2 「学生運動」の成長、3 ファシズムの影響を受けた「準軍事的学生組織」の形成、4 「軍事的急進組織」の分離/結合、の範疇に位置づけることができる。イスラーム復興主義(イスラーム原理主義)の暴力化(軍事組織の内在化)を宗教運動組織の特殊性に帰すのではなく、この地域における近代化(国民国家体系への編入過程)の必然的(システム的)なプロセスとして分析する必要があることを主張した。
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Research Products
(1 results)