2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J05681
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小川 浩史 Ritsumeikan University, 大学院・先端総合学術研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ガマール・アブドゥン=ナーセル / アラブ民族主義 / アイデンティティ / 国民主体 / 積極的中立主義 / 植民地主義 / エジプト |
Research Abstract |
本年度は、ナセリズムにおけるアラブ民族主義をイデオロギー(アイデンティティ構築)と外交政策の両面から分析することで、エジプト民族主義からアラブ民族主義への歴史的な発展段階を明らかにした。アラブ民族主義に関するこれまでの研究は、国家戦略や権力政治的な側面を重視するものとイデオロギー的な側面を重視するものの二つに分類することができたが、後者の立場に則しながらもイデオロギーが生産された歴史的背景(外交政策史)を詳細に分析することで、エジプト民族主義からアラブ民族主義への移行に新たな解釈を提示した。イデオロギーに着目したこれまでの研究では、対外的な圧力によって「アラブ統合民族主義」が段階的に取り入れられていたことを論じていた。しかし、「アイデンティティ(国民主体)」を「時間(歴史)と空間(境界)」の絶えざる構築のプロセスとする構築主義的な分析視角を導入することによって、エジプト国民主体の再構築として捉えられる「アラブ圏」構想の段階と、その再構築の枠組みから逸脱してアラブ民族の統一主体を立ち上げようとする「アラブ統合民族主義」への契機が存在したことを明らかにした。また、国家戦略や権力政治的な側面を重視するこれまでの研究ではアラブ民族主義のイデオロギー的な側面は軽視されていたが、「中立主義」から「積極的中立主義」へと展開したエジプトの外交政策にはナーセルの「二重革命」の理念がその論理基盤として位置づけられていたこと、そして、それらの一連の外交政策がアラブ民族主義(「アラブ圏」の共同闘争)として語られていたことを指摘した。そして最後に、国家戦略や権力政治的な側面とイデオロギー的な側面の結合状態としてアラブ民族主義を理解することの重要性を議論した。
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Research Products
(2 results)