2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J05701
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉岡 貴子 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 「源氏物語」享受史 / 「源氏物語」巻名和歌 / 『源氏一部之簡要』 / 『光源氏一部連歌寄合』 / 二条良基 / 『河海抄』 / 「伊勢物語」 |
Research Abstract |
本年度発表した論文では、「源氏物語」享受の一様相である「源氏物語」巻名和歌、そのうち『源氏一部之簡要』が収める巻名和歌について論じた。そもそも『源氏一部之簡要』は、貞治四(1365)年に、二条良基を中心とする当時の有識者たちによって選定された「源氏物語」寄合集成書『光源氏一部連歌寄合』の伝本の一種として、これまで評価されてきた。この『光源氏一部連歌寄合』が収める源氏寄合とともに、各巻の冒頭に掲載されるのが、今回考察対象とした巻名和歌群である。考察の結果、これら巻名和歌群の「源氏物語」摂取の中には、「連歌」を意識したであろう事象が存在していることが確認できた。よってこの巻名和歌群を詠じたのは連歌に通じた人物(単独ではなく複数人か)であった可能性が高く、こうした側面を持つ巻名和歌と『光源氏一部連歌寄合』が合わさって、『源氏一部之簡要』が成り立っているということは、本書の編纂が一つの意思(方向性)を持って進められたことを表していると言えよう。『光源氏一部連歌寄合』は伝本が二本しか現存していない。その理由として『源氏一部之簡要』に見られるように、その他の連歌関連書と合わせて別の一書にする作業が当時盛んであったことが考えられる。二条良基やその周辺の人々の動向(知識の流動)を考える上でも、大変興味深い考察結果が得られたと考えている。 また、"『河海抄』の「伊勢物語」"という題目で、学会発表を行った(2005年5月、説話・伝承学会春季大会にて)。このテーマに関しては、更に考察を深めるべき課題が出てきたため、次年度以降に再度学会発表を経て、論文化したいと考えている。 今後も『河海抄』を考察の中心に置きつつ、南北朝期北朝方文壇の「知」がいかなるものであったのかを明らかにすべく、考察を続けていきたい。
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Research Products
(1 results)