2005 Fiscal Year Annual Research Report
種の共存における種間相互作用の再検討: 正と負の作用のバランスを介した共存の検証
Project/Area Number |
05J05862
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河井 崇 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 環境ストレス / 熱ストレス / 競争 / 共存 / 共生 / 潮間帯 / 環境緩和作用 / 地理的変異 |
Research Abstract |
1 物理的環境評価 鹿児島・熊本・福岡・徳島・茨城・岩手・北海道の全国7地点で、岩礁潮間帯における干潮時の熱ストレスを評価した。その結果、気温は緯渡が高くなるほど、すなわち日本沿岸を北上するにつれ低下する傾向が見られた。しかしながら、干潮時刻・時間は地点間で異なり、緯度との関係は見られなかった。各地での熱ストレスの強さを、これら気温と干潮時刻・時間のデータを用いて熱ストレス指数を計算し評価したところ、強い順に鹿児島=熊本=徳島>福岡>岩手>北海道>茨城となり、南北での逆転現象が確認された。 2 カメノテ、ムラサキインコの分布パターン及び種間相互作用 上記の7地点において、カメノテとムラサキインコの分布パターンを調査した。2種の分布形態は、熱ストレス指数の非常に高い3地点(鹿児島、熊本、徳島)においてはパッチ状であったが、他の4地点においてはマット状であることが確認された。また、2種の出現頻度にも地点間で違いが見られ、熱ストレス指数が低くなるにつれてムラサキインコの割合が上昇した。熱ストレス指数の最も低い茨城においては、ムラサキインコの出現割合はほぼ100%と非常に高い値を示した。反対に、カメノテの出現割合は熱ストレス指数の上昇に伴い増加するが、熱ストレス指数の最も高い地点においても70〜80%にとどまった。 これらの結果により、潮間帯において熱ストレスの地理的変異は、緯度による気温の変動勾配によって単純に決定されているわけではなく、それぞれの場所における潮汐のリズムが重要な影響を持っていることが明らかになった。また、熱ストレス環境は、そこに生息する生物の分布や種間相互作用へ強く影響していることが示唆された。熱ストレスが強い場所では、カメノテの環境緩和作用によるムラサキインコへの正の作用により安定共存が可能になるが、熱ストレスが弱くなるにつれ、ムラサキインコによる負の競争作用がカメノテの共存を阻害していると推測される。
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Research Products
(1 results)