2006 Fiscal Year Annual Research Report
種の共存における種間相互作用の再検討 : 正と負の作用のバランスを介した共存の検証
Project/Area Number |
05J05862
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河井 崇 九州大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 環境ストレス / 熱ストレス / 競争 / facilitation / 岩礁潮間帯 / 環境緩和作用 / 種間相互作用 / 共存 |
Research Abstract |
熱ストレス強度と種間相互作用との関係の地理的空間スケールにおける一般性を検証することを目的として,カメノテとムラサキインコの分布域をほぼ網羅し異なる気候帯にまたがる,鹿児島から北海道にかけた全国7ヶ所(鹿児島・熊本・福岡・徳島・茨城・岩手・北海道)の岩礁潮間帯において,2006年6月から9月にかけて熱ストレス強度,及び2種間の相互作用の評価を行った. 各地の岩礁潮間帯にムラサキインコ型温度ロガー(ムラサキインコの殻の中に小型防水温度ロガーをシリコンで埋め込んだもの)を設置し,ムラサキインコが各地で受けている干潮時の熱ストレスの強さを測定した.その結果,熱ストレスの強い順に,熊本>鹿児島=徳島>福岡>茨城>北海道>岩手となり,潮間帯における干潮時の熱ストレスの強度は,緯度勾配に沿った気温の変移と単純に同調しているわけでなく,緯度勾配と独立したそれぞれの場所に特有の潮汐リズムにより強く影響を受けていることがわかった.従って,北に位置する場所においても,夏季の真昼に干潮が重なれば熱ストレスは厳しくなり,南に位置するが真昼に潮が引かない場所では逆に穏やかとなり,熱ストレス強度分布の南北逆転現象が起こっていた. また,熱ストレス強度は,種間相互作用の変動を介して2種の分布へ強く影響しており,熱ストレスが強い場所ではその緩和機能を持ったカメノテ中心のfacilitation(扶助関係)を基礎とした系が形成されていたが,熱ストレスが穏やかな場所では,耐性は低いが競争能力の高いムラサキインコを中心として競争が卓越した系が形成されていた.これらの結果は,地理的スケールにおいてストレス勾配仮説を支持するものである.
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Research Products
(1 results)