2006 Fiscal Year Annual Research Report
STAT3と共役して形質転換を誘導する新規増殖因子granulinの機能解析
Project/Area Number |
05J05878
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
奥村 晶子 (城尾 晶子) 九州大学, 生体防御医学研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 膜タンパク / ERストレス / アポトーシス / 転写制御 / 形質転換 / サイトカイン / 肝細胞 / 小胞体輸送 |
Research Abstract |
慢性骨髄性白血病の原因遺伝子Bcr-Ablから明らかなようにチロシンキナーゼの恒常的活性化は腫瘍や白血病の発生、悪性化に密接に関連している。特に活性化チロシンキナーゼによってSTAT3が活性化されて癌細胞の増殖や抗アポトーシスに関与することが知られている。STAT3は形質転換能を有するが、STAT3による癌化の分子機構は十分解明されてない。そこで恒常的に活性化されたSTAT3によって形質転換した細胞に特異的な分泌タンパクをクローニングする目的で、我々はシグナルシークエンストラップ法を用いて、マウスの血球系stem cellのcDNAライブラリーをスクリーニングした。その結果既知の分泌タンパクgranulinと小胞体(ER)に特異的に局在するタンパク質D12を同定した。Granulinはそれ自身でコロニー形成能を有しERKを活性化することを示した。D12は明らかなシグナルシークエンスは持たないが、NES(nuclear export signal)に類似したモチーフを有していた。免疫染色法では、全長のD12及びN末を欠失した2種類の変異体はERに限局して局在するが、C末の疎水性ドメインを欠失した変異体はERだけでなく核及び細胞質にも存在していた。したがってD12はC末領域を介してERに局在する。さらにD12はその一次構造から新規のt-SNAREと考えられた。D12の結合タンパク質を免疫沈降法により網羅的に検索したところ、D12はalpha-SNAP、Sec22b、Syntaxin18と結合したことから、新規のSNAREであることが明らかとなった。細胞分画法により、D12は大部分がERあるいはER-Golgi intermediate compartmentsに存在することが示されたが、過剰発現あるいはsiRNAを用いたノックダウンを行ったところ、予想に反して初期分泌経路における内膜系の輸送には変化が見られなかった。しかし、その一方で、D12-siRNAは速やかなアポトーシスを誘導し、明らかなUPR(unfold protein response)は伴わないものの、lipofuscinの合成が観察された。lipofuscinの形成は、主にライソソームの分解酵素によるミトコンドリアの分解が障害された際に誘導されることが知られている。驚くべきことに、D12をノックダウンした細胞ではcathepsin Dのpost-Golgi maturationに異常がみられ、D12はライソソームにおける分解機能に関与していることが示唆された。
|
Research Products
(1 results)