2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J05908
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
荒木 和憲 九州大学, 人文科学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 中世 / 対馬 / 宗氏 / 領国 / 朝鮮 / 貿易 / 海域 / 東アジア |
Research Abstract |
本年度の研究目的の達成状況は下記のとおりである。 1, 15〜16世紀の宗氏権力の形成・変容と朝鮮通交貿易権との関係を検証した。 (1)拙稿「一五世紀対馬宗氏の権力形成と朝鮮通交権」では、1430年代に宗氏が「文引制度」(渡航証明制度)を領国内のあらゆる朝鮮渡航船に適用して朝鮮方面での生産・流通・貿易活動に規制をかけることで在地社会からの求心力をうみだしたこと、および1443年に朝鮮王朝が「島主歳遣船制度」(対馬の年間通交回数を50回に制限する制度)を導入したため、それまで家臣たちに貿易機会をあたえることで権力を維持してきた宗氏は危機に直面し、それを克服するために「偽使通交権」を集積しはじめたことを指摘した。本研究によって、現在の中世日朝関係史研究の焦点である「偽使」問題(貿易権の対馬集中)の発生メカニズムが明らかになった。 (2)拙稿「15・16世紀の島津氏-琉球関係」では、中世日琉関係史研究の重要な論点である「島津氏印判制」を再検討し、それが島津氏の領国形成ときわめて密接なかかわりをもつことを指摘した。これは(1)において検討した対馬宗氏の文引制度との比較によってえられた知見であり、文引制度の政治史的意義がいっそう明らかになった。 2, 14〜16世紀の日朝貿易と対馬の経済構造との関係を検証した。 (1)佐伯弘次・松尾弘毅・荒木和憲「14〜16世紀の三島地域と朝鮮」では、1350年代〜1420年代には浅茅湾岸地域が対馬の経済の中心であったが、1430年代〜1590年代には佐賀(室町期の守護所所在地)を中核とする北部・中部地域がそれにとってかわったこと、および府中(戦国期の守護所所在地)は1600年代に領国経済が再編されるまでは経済の中心となりえなかったことを指摘した。本研究によって、I(1)で政治史的視点から検討した「貿易権の対馬集中」を経済史的視点からとらえなおすことができた。
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Research Products
(4 results)