2005 Fiscal Year Annual Research Report
縄文時代における資源利用の実態と生業・居住システムの変容過程
Project/Area Number |
05J05927
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
板倉 有大 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 縄文時代 / 資源利用 / 生業・居住システム / 地下茎類 / イネ科植物 / 打製石斧 / 打製刃器類 / 磨製石斧 |
Research Abstract |
1.物質文化からみた半栽培・栽培技術の実態 (1)地下茎類利用 地下茎類は遺跡に残存しにくいため,それらの利用に関する先史学的な研究は困難であると考えられている。しかし、本研究では地下茎類の採集に使用された打製石斧という石器を分析することで,縄文時代の地下茎類利用について実態に近い形で議論できる可能性を拓いた。具体的には,従来一括して捉えられていた打製石斧を狭型と広型に分類し,それらの遺跡内での共存関係とその通時的な変化を把握している。このパターンは,野生地下茎類の採集から半栽培,栽培という集約的利用への変化を反映していると考えられる。 (2)イネ科植物利用 イネ科植物は種子や珪酸体が土器胎土内に残存する場合があり,それらが縄文時代に利用されていたことは明らかになっている。しかし,植物体の状態からはそれらがどのように利用されていたかは理解できない。本研究では,イネ科植物の穂摘み具である打製刃器類の分析によって,縄文時代におけるイネ科植物利用の詳細を明らかにした。具体的には,従来ほとんど注目されていなかった剥片石器について穂摘み具であることを明らかにし,その出現時期と技術的な改良の過程,弥生時代の磨製石庖丁への連続などをみることで,イネ科植物利用の変容過程を明らかにしている。 2.立地分析からみた生業・居住システムの変容過程 上記1.にみられるような生業道具からみた植物利用の変容過程について,遺跡立地からの検証を行った。その結果,沿岸部から内陸部,河岸段丘から丘陵部,台地上から丘陵部などの通時的な遺跡立地の変化を明らかにしている。この変化は,野生地下茎類の利用からイネ科植物を含めた栽培植物の利用,さらに焼畑利用という生業・居住システムの変容を反映していると考えられる。また,この変化は,木材利用道具である磨製石斧の動態分析によっても支持できるという結果が得られている。
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Research Products
(1 results)