Research Abstract |
本研究は,組織構成員の安全パフォーマンスを促進するために必要な組織のマネジメントとチームワークについて検討するものである。本年度は,以下の3つの研究を行った。 (1)文献研究 昨年度に継続して,医療現場の安全に関する文献,特に組織の安全風土と組織構成員の安全パフォーマンスについての実証的研究を精査した。先行研究の知見を整理し,安全パフォーマンスを規定すると考えられる組織レベルおよびチームレベルの要因を同定した。 (2)安全に関連する共有されたメンタルモデルの測定尺度開発研究 医療現場において共有が必要とされるメンタルモデルとして,失敗(エラー)に関する価値観に着目し,質問紙によるその心理学的測定尺度の開発を行った。まず大学生を対象として,価値観の記述収集(53名),二度の質問紙調査(246名,702名)による基本尺度の構成を行った。この結果を基に,医療職対象の記述収集(259名)を経て尺度項目の精緻化を行い,さらに質問紙調査(425名)を実施して最終的な尺度を作成した。最終尺度は,失敗に関する価値観を4つの側面(失敗のネガティブ感情価,失敗からの学習可能性,失敗回避欲求,失敗の発生可能性)で把握するものであり,十分に高い信頼性を有し,心理学的構成概念としての妥当性も高いことを確認した。 (3)医療現場における安全パフォーマンスの規定要因に関する調査研究 安全パフォーマンスを安全遵守(業務手順,マニュアルの遵守),安全支援(作業負荷の再配分,他者のエラーの指摘などの相互支援),安全創出(職場内での業務改善の提案)の3つに大別し,医療職1649名を対象とする質問紙調査を実施した。組織・集団レベルの安全風土,失敗に関する価値観のメンタルモデル,そして安全パフォーマンスの相互関係を統計的解析により検討した。
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