2005 Fiscal Year Annual Research Report
始源隕石の物質科学的特徴に基づいた原始太陽系星雲における固体微粒子の熱過程の解明
Project/Area Number |
05J05976
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
赤木 剛 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 太陽系 / 隕石 / コンドルール / 酸素同位体 / Al-Mg年代 |
Research Abstract |
今年度は、始原隕石の主要構成組織である球粒物質「コンドルール」の物質科学的特徴から、その形成メカニズムや形成環境について考察した。コンドルールはその形状や形成年代から、原始太陽系星雲内で加熱を受けて溶融した前駆固体物質が冷却・固化したものであると考えられている。特に私は、先行研究でも集中的に研究されていない組織「複合コンドルール」に注目した。この組織は複数のコンドルールが互いにくっついたものであり、複合面において球形を維持している方は他方よりも先に形成されたということが組織観察により判断される。そのため、複合したコンドルール各々の化学組成や同位体組成、さらには短寿命核種^<26>Alの崩壊系を用いて得られる形成年代を比較すれば、原始太陽系星雲にかつて存在したコンドルールの組成変化が的確に議論できる。今年度は、複数の隕石グループから見出された5組の複合コンドルールについて酸素同位体組成を分析し、そのうちの2組について放射年代測定を行った。分析には九州大学の2次イオン質量分析計(SIMS)を用いた。その結果、次の2点が明らかとなった。(1)形成の前後によらず、複合したコンドルール間で酸素同位体組成は類似していた。(2)一組の複合コンドルールにおいて形成年代におよそ100万年の差が検出された。形成の前後は、組織から判断されるものと合致した。この物証から、原始太陽系星雲においてコンドルールの複数回加熱が少なくとも100万年間は続いていたという事実が示された。さらに年代差が検出されたこの複合コンドルールについても酸素同位体組成の違いは見出せなかったことから、先行コンドルールはその形成以降約100万年もの期間、類似した酸素同位体組成をもつコンドルール群の中に留まり、その後別の加熱イベントで溶融した群中のコンドルールと衝突・複合したという状況が示唆された。
|
Research Products
(2 results)