2006 Fiscal Year Annual Research Report
始源隕石の物質科学的特徴に基づいた原始太陽系星雲における固体微粒子の熱過程の解明
Project/Area Number |
05J05976
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
赤木 剛 九州大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 太陽系 / 隕石 / コンドルール / 鉱物 |
Research Abstract |
今年度は昨年に引き続き、初期太陽系における物質の進化を論じることを目的に、隕石の主要構成物質である球状物質「コンドルール」について研究を行ってきた。コンドルールは、その形状や組織および放射性核種を用いた年代測定から、原始太陽系星雲内で加熱を受けて溶融した前駆固体物質が固化したものであると考えられている。本研究ではまず隕石薄片を追加作成し、コンドルールの鉱物組成を丹念に調べあげた。その結果、始源的な隕石にはごく希な鉱物「cordierite」がコンドルールから見つかった。そこで、この鉱物の結晶構造を茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構でX線回折分析により決定した後、微細組織と化学組成を茨城大学・野口研究室の透過電子顕微鏡で観察・分析した。その結果、限石から見つかったcordieriteは地球のものと比べ、Naに富む異常な組成を持つことが分かった。そこで、このNa-rich cordieriteがコンドルールの構成鉱物として形成されうる温度条件を調べるため、大阪大学・土山研究室でコンドルール組織の再現実験を行った。その結果、Naを含まないコンドルールメルトからは、Naを含まない通常組成のcordieriteが1200度で晶出した。一方、Naを含めたコンドルールメルトからは、1000度から1500度までのどの温度領域でもcordieriteは晶出しなかった。この結果から、メルトにおけるNaの存在はcordieriteの晶出を阻害する要因になっていると考えられる。また、天然のコンドルールから見つかったcordieriteに含まれるNaは、コンドルール形成以降の2次的な変質により取り込まれたものである可能性が高い。この結果は、2007年2月に雑誌Astrophysical journalにて公表された。
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Research Products
(1 results)