2005 Fiscal Year Annual Research Report
北極海および北太平洋における珪質植物プランクトン群集と古海洋環境復元
Project/Area Number |
05J05978
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小野寺 丈尚太郎 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | IODP / 北極海 / 第三紀始新世 / 珪質鞭毛藻類 / エブリディアン(エブリア類) |
Research Abstract |
北極海掘削試料の珪質鞭毛藻類およびエブリディアンの分類および記載 北極海中央部では初めてとなる深海掘削がIODPによって2004年にロモノソフ海嶺上で行われた。本研究は、その試料における微小プランクトン珪質鞭毛藻およびエブリディアンの微化石の分析から、それらの微化石層序および古環境の復元を行うことが主たるテーマである。北極海における微化石に関する知見はまだほとんど無いため、平成17年度は基本的なデータを得ることを主な目的とした。平成17年度の主な実施内容は、その北極海掘削試料を詳しく分析し、珪質鞭毛藻類化石とエブリディアン化石の産出種を明らかにすることと、それらの産出頻度を明らかにすることとした。 分析の結果、珪質鞭毛藻類およびエブリディアン化石は第三紀始新世の堆積物にのみ保存されていることが分かった。産出層準の前後には、黄鉄鉱で置換された微化石が確認された。始新世以外の地層で珪質微化石が産出しなかった理由は、珪質微化石の溶解や続成作用による変質によると考えられ、プランクトンが存在していなかった訳ではないと考えられる。珪質微化石産出層準における珪質鞭毛藻およびエブリディアン化石の含有量は、通常の遠洋堆積物の場合に比べて非常に高かった。現生の珪質鞭毛藻類やエブリディアンは外洋水よりも沿岸水で多く見られる。産出した珪質鞭毛藻類およびエブリディアン化石のうち、従来記載されていない種が数種含まれており、それらは当時の北極海固有の新化石種である可能性がある。新化石種の産出層準は、当時の北大西洋域の群集とは独立した特殊な群集構成をしており、外洋との海水交換が限られた閉鎖的な環境であった可能性がある。これらの分析結果に加えて、一部の層準で淡水指標の有機質微化石が珪質鞭毛藻類やエブリディアンと共に産出した結果と併せると、始新世の北極海は河口域から内湾域のような汽水環境を有していたことが考えられた。
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Research Products
(1 results)