2006 Fiscal Year Annual Research Report
北極海および北太平洋における珪質植物プランクトン群集と古海洋環境復元
Project/Area Number |
05J05978
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小野寺 丈尚太郎 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | IODP / 北極海 / 第三紀始新世 / 古海洋 / 珪質鞭毛藻 / エブリディアン / セディメントトラップ実験 / 珪藻 |
Research Abstract |
1.北極海掘削試料の珪質鞭毛藻およびエブリディアンに基づく古海洋環境復元 北極海中央部では初めてとなる深海掘削がロモノソフ海嶺上で行われた(IODP302航海-ACEX)。本研究は、その試料における珪質鞭毛藻およびエブリディアン微化石分析から、微化石層序と古海洋環境の復元を行うことが主なテーマである。本年度は、以下の事柄が明らかになった。(1)珪質鞭毛藻、エブリディアンだけでなく、新種の放散虫化石も発見されたことから、当時の北大西洋群集とは独立した特殊な群集構成をしており、外洋との表層海水の交換は現在よりも限られていた。(2)海生および淡水生のプランクトン微化石が同時に産出することから、当時の上部水柱には顕著な塩分躍層がみられた。上部水柱には淡水種を含む低塩分水または淡水があり、その下部に珪質鞭毛藻やエブリディアンを含む比較的塩分の高い水塊が存在した。(3)エブリディアンが多数産出したことは、有光層下部に貧酸素水塊が存在した可能性を示唆するかもしれない。現生エブリディアンの一種は共生藻類を有し、溶存酸素が少なくても有光層内であれば生存できる。珪質微化石が産出した始新世の北極海は、黒海に似た循環系が存在したことが以上の成果などから考えられた。本成果に関する論文2本は査読中であり、論文1本は投稿準備中である。 2.北太平洋における珪質植物プランクトン群集 ベーリング海および北太平洋亜寒帯における長期時系列セディメントトラップ(Stations AB and SA)の試料のうち、前半8年分の珪藻沈降群集フラックスデータを考察した結果、ベーリング海の観測点では珪藻沈降群集と上部水塊構造との関係が分かった。本研究における珪藻沈降群集フラックスの概要は月刊海洋に発表し、詳細版は原稿準備中である。また、北西太平洋の沈降粒子における珪藻種のカタログを九州大学理学部紀要から出版した。
|
Research Products
(3 results)