2005 Fiscal Year Annual Research Report
鉛直シアー場における台風発生過程の雲解像3次元モデルを用いた研究
Project/Area Number |
05J05984
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中野 満寿男 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 台風 / 雲解像モデル |
Research Abstract |
鉛直シアー場での層状降水の蒸発による渦生成の可否が、これまでに導出した無次元パラメータShear Index(SI)で判定できることをより確固たるものにする目的で、層状降水の蒸発による冷却を強制した数値実験結果のより詳細な解析を行った。 まず流跡線解析によって、対流圏中層で形成される渦度を伴った空気塊がどのような経路をとって地上へと降下しているのかを調べた。その結果、3次元の流れ場であっても空気塊は下降しつつ基本場の流れによって水平方向に吹き流されるという、SIを導出する際に用いた作業仮説が妥当であることが確認できた。渦度収支解析を行った結果、冷却域内で低気圧性の渦が上方から生成されることとの相乗効果によって、西風鉛直シアー場では、tiltingによる負の渦の生成が冷却域南端でのみ持続することがわかった。このようにして形成された、冷却南端に局在する負の渦度に伴う流れによって、冷却域内では鉛直シアーが局所的に小さくなっていることが確かめられた。このことは、冷却に伴う渦生成がシアーに耐える機構を自ずと持っていることを示唆している。 この機構は、SIの導出の際にはまったく考慮されていなかったため、SIの導出の再検討を行った。その結果、この効果を採り入れたSIはこれまで用いてきたSIよりも数割小さいものとなり、地表への渦の伸長の可否を決めるSIの値は1.5-2となることがわかった。この結果はパーセル法による考察から期待される値とよく一致する。以上の結果は、現在投稿準備中である。 また今年度は来年度に行う数値実験の準備として、3次元乾燥大気モデルへの温かい雨の雲物理過程の導入を完了し、テスト計算を行った。
|