2006 Fiscal Year Annual Research Report
鉛直シアー場における台風発生過程の雲解像3次元モデルを用いた研究
Project/Area Number |
05J05984
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中野 満寿男 九州大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 台風 / 数値モデリング |
Research Abstract |
Bister and Emanuel(1997,以下BE)が提案した初期渦形成メカニズム、すなわち層状降水の蒸発に伴う冷却による渦生成が鉛直シアー場で実際に起こりうるかを確かめるため、暖かい雨パラメタリゼーションを導入した3次元湿潤大気モデルを開発し、系統的なパラメータ数値実験を行った。 モデルには線形な西風シアーを導入した。シアーの大きさは地上と高度15kmの風速差が0,20,40m/sとした。またBEが行ったように、高度5kmにおける円形領域の雨水混合比を36時間一定とすることで層状降水を強制した。降水域の半径と降水強度は、BEが行った感度実験を参考にそれぞれ3通り変化させ、計37通りのパラメータ実験を行った。その結果、シアーがない場合、雨滴の蒸発に伴う冷却の強度は雨域の周辺部で強く、中心部で弱いことがわかった。また、雨の降り始めではほとんどの雨滴が高度2km以上で蒸発しており、それ以下の高度領域では冷却が起きない。時間の経過とともに対流圏中層が湿ってくると、雨滴が地上付近にまで達するようになり、地表でも冷却が起こり始めることがわかった。シアーがある場合、冷却の強度が風下側よりも風上側で強いことがわかった。さらに、降水強度が小さい場合、シアーの存在にかかわらず冷却が地表付近で起きないことがわかった。 渦の接地の可否を、地上付近での最大渦度など客観的な指標に基づいて判定した結果、降水強度が弱く、雨域の半径が小さく、シアーが大きい場合ほど渦が接地できないことがわかった。なお、降水強度が弱い場合はシアーの有無にかかわらず、すべての場合で渦が接地しなかった。 Shear Index(SI)を実験結果に適用した結果、SI>3の場合に渦が接地しないことがわかった。 この結果から層状降水の蒸発に伴う冷却による初期渦形成は、現実大気中でも十分に起こりうると考えられる。
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Research Products
(1 results)