2006 Fiscal Year Annual Research Report
土壌病害に対する植物根部の感染リスク評価と感染回避のための側根発生プログラム
Project/Area Number |
05J06110
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鈴木 清樹 九州大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 土壌病害 / 根系 / L-システム / 側根 / 不定根 / フザリウム病 / 根腐れ / 感染リスク |
Research Abstract |
報告者は数多くの検定試験より、トマト根腐萎凋病の症例において、その病徴部位に局在性があり、根の末端部から感染を起こす危険率が高いという知見を得た。このことは植物にとって、根の分岐による"養分吸収の拡張"と"病害感染リスクの拡大"というジレンマを抱えていることを意味している。そこで申請者は、実験的手法では得難い土壌中での植物・病原菌の相互作用について数理モデルの解析を行うことで病害発生のメカニズムの解明を試みた。 根系構造のモデルにおいて左右交互に側根形成を行うL-システム(A.Lindenmayer1990)が用いられることが多い。しかし、P.W.Barlow and J.S.Adam(1988)の研究から、トマトの側根原基の形成が可能な部位は根軸上に一定の間隔で存在することが予見されており、それら部位から左右ランダムに側根形成させる根系モデルを準備した。次に、それら根系モデルを用いて感染に対するリスクと養分吸収能の評価を行った。この場合、同病害に感染しても、不定根を出して養分吸収を継続できるので、感染した根系ではできる限り養分を吸収することが重要となる。そこで最初に、感染後の養分吸収量が最も大きい根系構造を調べた。根端を感染開始点とし、感染率は根端数に依存し、根の養分吸収量は未感染根の全長に依存するとしたモデルでは、側根形成を全く行わずに根長だけを伸長させる根系モデルが最適となった。さらに、土壌の環境要因として、養分の密度分布を根端側へ偏らせた場合でも、側根形成を抑制する傾向は変わらなかった。そこで、感染時期に個体差を設け、自然死亡率と側根形成による感染死亡率を考慮することにより、感染前の養分吸収量が最大となる根系構造を求めた。その結果、養分吸収と感染リスクの間にトレードオフがみられ、感染危険率によって最適な側根形成率が推移することがわかった。
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