2005 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌早期診断及び分子標的治療のための候補遺伝子同定と膵液遺伝子診断
Project/Area Number |
05J06118
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大内田 研宙 九州大学, 大学院・医学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 膵癌 / S100 / MUC / 膵液 / マイクロダイセクション / IPMN / PanIN / hTERT |
Research Abstract |
難治癌である膵癌の予後を改善する方法は、早期診断と画期的治療法の開発である。近年、膵癌の網羅的解析が進展し、診断のマーカーあるいは治療標的として有用であると予想される候補遺伝子が多数同定されている。本研究の目的は、膵癌診断で重要な臨床サンプルである膵液による分子診断を実現するために、膵癌の早期診断に有効な、あるいは分子標的治療のための遺伝子群を同定し、信頼性の高い遺伝子診断法を確立することである。1)すでに多数保存してあるバルク切除膵組織を用いて、有望なマーカーとしてよく知られているhTERT、近年の網羅的解析にて多数報告されているS100 family, MUC familyについてその発現量を検討し、非腫瘍性の膵組織と比較して、癌部の組織において有意に発現が高いことを確認した。2)次に、マイクロダイセクションにより標的細胞のみを選択的に抽出し、浸潤部の癌細胞、前癌病変、炎症性部位の膵管細胞、正常膵管細胞におけるそれぞれの遺伝子の発現を定量的one-step real-time RT-PCRにより測定した。正常細胞と比較すると、ほぼ全ての標的遺伝子において発現の増強を認め、前癌病変と比較すると、hTERTは、有意に発現が高く、S100A6,MUC1は高い傾向があったが、S100P,MUC5AC等は、すでに前癌病変の段階から発現が増強していることがわかった。3)更に、術前にERCPにより採取した膵液よりtotal RNAを抽出し、上記遺伝子群の定量的解析を行った。慢性膵炎患者からの膵液と比較すると、S100A6,MUC1,MUC5AC,S100Pは、有意に発現が増強しており、ROC解析の結果からも膵炎と膵癌との鑑別には有用と考えられた。しかしながら、その多くは、膵癌の前癌病変の一つであるIPMNでもその発現が増強しており、IPMN患者由来の膵液においても、癌と比較して同程度か、あるいは癌以上の発現増強が認められ、IPMNとの鑑別には不十分であると考えられた。しかし、IPMNを含め、一般的な前癌病変であるPanINにおいてもS100PやMUC5AC,S100A6は発現が増強しており、膵癌に進展する可能性がある病変を有するgroupのスクリーニングに有効である可能性が示唆された。また、hTERTの発現は、前癌病変であるIPMNでの発現は低く、その鑑別能は膵液解析においても比較的高かった。また、炎症性部位(膵炎)での膵管上皮細胞でも発現は低かったが、一部のリンパ球において癌と同レベルの発現の増強を認めるものがあり、膵液中のhTERTの定量解析による膵癌と膵炎の鑑別能は、十分なものではなかった。今後、さらに、癌特異的に発現する遺伝子の同定を勧め、さらに、マイクロダイセクションにより膵液中の標的細胞を選択的に抽出することにより、膵癌診断の向上を目指す。
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Research Products
(2 results)