2005 Fiscal Year Annual Research Report
ゼブラフィッシュ初期発生系を用いた血管新生を制御する中性セラミダーゼに関する研究
Project/Area Number |
05J06156
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉村 征浩 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 中性セラミダーゼ / スフィンゴシン-1-リン酸 / ゼブラフィッシュ / 初期発生 / 血管形成 / 心臓形成 / ノックダウン |
Research Abstract |
近年、セラミド(Cer)とその代謝物であるスフィンゴシン(Sph)およびスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は細胞機能を調節する新しい脂質メディエーターとして注目されている。Sphはde novo合成されず、セラミダーゼ(CDase)によってCerが加水分解されることによって生じる。よってCDaseはSph、S1Pを介した情報伝達系の重要な鍵酵素である。本研究はゼブラフィッシュ初期発生系をモデルに、血管形成に中性CDase、スフィンゴ脂質がどのように関与するかを明らかにすることを目的としている。 中性CDaseノックダウン胚に蛍光標識デキストランを注入すると、体節間の血流が停滞し、蛍光色素が背側大動脈から血管外へ漏洩していることが判明した。血管内皮細胞にEGFPを発現するトランスジェニックゼブラフィッシュの解析によって、中性CDaseノックダウン胚では体節間血管は間腔を形成せず、背側大動脈の血管内皮細胞は正常に配列しないことがわかった。加えて、心拍数の低下も観察され、心筋細胞のマーカーであるcmlc2のin situハイブリダイゼーションおよび走査型電子顕微鏡観察により、heart tubeの伸長が遅延しており、心筋細胞の配列が乱れ、心臓形成不全を起こしていることが明らかとなった。 中性CDaseノックダウンによる表現型の分子メカニズムを明らかにするために、SphまたはS1Pを中性CDaseノックダウン胚に注入した。その結果、中性CDaseノックダウン胚の表現型はSphやS1Pによって回復することがわかった。また、S1P受容体であるS1P_1ノックダウン胚は中性CDaseノックダウン胚と同様な表現型を示した。 以上の結果から、中性CDaseはゼブラフィッシュ初期発生において、Sphを生成することでS1Pシグナリングを制御し、循環器系の発生に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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