2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J06173
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
稲富 健 九州大学, 人間環境学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自己呈示 / 自己卑下呈示 / 自己高揚呈示 / 対人魅力 |
Research Abstract |
人は社会的状況において,自分自身に関する様々な情報(能力,性格など)を他者に伝達する.こうした自己に関する情報の呈示を「自己呈示」という.人は社会的状況に合わせて自己呈示を意識的に吟味・選択している.如何なる状況でどのような自己呈示を行うかという吟味プロセスは,「これから行う自己呈示が他者にどのような印象を与えるだろうか」といった認知的な予測過程であると本研究では仮定している.この吟味プロセスの詳細を明らかにするとともに,そのような吟味プロセスが獲得される発達的変化を捉えることを最終目的として設定している. 本年度では,能力情報に関する自己呈示を取り上げ,他者に与える「実際の印象」について検討した.検討に先立ち「ある能力に関して,一般的基準と比較して自己を優れている,あるいは劣っていると呈示する程度」と定義される「卑下-高揚度」という概念を新たに提出した.実験では,卑下-高揚度を操作するため,刺激人物(被評定者)の自己呈示を「非常に優れている(具体的には,平均50点の架空のテストについて70点だと予想する)」から「非常に劣っている(上述の架空のテストについて30点だと予想する)」まで9段階に操作した.その上で,被験者には刺激人物の対人魅力(人として魅力を感じる程度)の評定を求めた。その結果,以下の点が明らかとなった. 1.自己呈示の卑下-高揚度に応じて刺激人物の対人魅力は変化する.最も対人魅力を高める「卑下-高揚度の最適水準」が存在する. 2.刺激人物の自己呈示が卑下-高揚度の最適水準から乖離するほど,刺激人物の対人魅力は漸次低下する. 3.卑下-高揚度の最適水準は一定ではなく,状況によって異なる. 今後は,卑下-高揚度に応じて変化する他者に与える印象を,人は自己呈示に先立って予測できるかどうか,また,予測できるのであれば,発達のどの段階で予測可能となるのかについて検討を行う.
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Research Products
(2 results)