2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J06173
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
稲富 健 Kyushu University, 人間環境学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 小学校児童 / 自己卑下呈示 / 文化的自己観 / 自己呈示 / 相互独立性 |
Research Abstract |
他者との相互作用において,自己の高い能力や特性を意図的に否定したり,他者より劣位にあると主張することを自己卑下呈示という。本研究では小学校児童を対象とし,自己卑下呈示の具体的な発話内容および自己卑下呈示を実行する児童の割合を明らかにした。さらに自己卑下呈示の実行に影響を与える要因として学年,性別,文化的自己観の影響を検討した。 小学校児童3年生から6年生,計278名(有効回答数259名)を対象として質問紙調査を実施した。自己卑下呈示が生起しやすい場面として「友人から賞賛される場面」を児童に提示した。その上で「褒めてくれた友だちに対してどのような返事をするか」について,児童自身の日頃の言葉遣いを想起させながら自由記述形式で回答を求めた。分析の結果,以下の4点が明らかとなった。 1.賞賛に対して自己卑下呈示で応答する児童は全体としては36%程度である。この結果は自己卑下呈示の社会的望ましさを「理解する」ことと「実行する」ことには隔たりがあることを示唆する。 2.学年の要因は自己卑下呈示の実行に有意な正の影響を与える。自己卑下呈示を実行する児童は,3年生の時点では約27%であるが,徐々に上昇し,6年生の時点では約56%に達する。 3.性別の要因は自己卑下呈示の実行に有意な影響を与えない。一般に成人では男性より女性の方が自己卑下呈示を実行しやすいと言われているが,小学生では性差は見られない。 4.文化的自己観の下位概念である相互独立性(自己を他者とは分離した独自の存在と捉える傾向)は自己卑下呈示の実行に有意な正の影響を与える。この結果は,相互独立性が高い児童は,自己に対する他者からの評価を高めることに意欲的であり,他者からポジティブな評価を受けやすいという自己卑下呈示の対人的効果を重視するためであると解釈できる。
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Research Products
(2 results)