2007 Fiscal Year Annual Research Report
1930年代における教授方針の変容過程 -大正期と戦時期との連続性の視点から-
Project/Area Number |
05J06179
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永江 由紀子 Kyushu University, 大学院・人間環境学研究院, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 大正新教育 / 大正自由教育 / 新教育協会 / 1930年代教育史 / 訓練 / 訓育 / 初等教育実践史 / 奈良女子高等師範学校附属小学校 |
Research Abstract |
1.戦前の新教育協会の活動内容に関する考察 研究実施計画に則して、1930年に発足した新教育協会に焦点をあて、1941年の解散に至るまでの活動内容を分析した。この協会は、昭和戦前期においてなお「新教育」を発信し続けた団体であり、本研究が課題とする1930年代における「新教育」の変容を解明するうえで、的確な事例になり得ると判断した。香川大学図書館(神原文庫)・玉川大学図書館(木戸文庫)等で収集した機関誌を史料として、協会の活動に関する通史的考察を行い、発足当初から教育改造を志向した協会の特質について論文にまとめた(『教育基礎学研究』第5号、2008年3月)。協会は、世界新教育連盟の日本支部であり、1935年には汎太平洋新教育会議を開催している。「国際協調」を掲げつつ、諸外国に日本精神を「正しく」伝えようとした協会の動向について、人間環境学コロキウム(2008年2月、九州大学)で報告した。さらに、協会が主張した「新教育」の内容を検討し、九州教育学会(2007年11月、琉球大学)で口頭発表を行った。1930年代において、協会が周囲からの視線を気にしながら「新教育」を定義しなおしていった過程に着目し、「止揚」の論理を用いることによって大正新教育の乗り越えを試みた様相を明らかにした。 2.1930年代における「訓練」「訓育」解釈の分析 前年度からの継続で、1930年代の初等教育現場に普及した「訓練」「訓育」概念の創出と展開について検討を加えた。奈良女子大学付属小学校で史料調査を行い、当時の『職員会記録』『学習指導要項』や機関誌『学習研究』をもとに、修身教授の方法としての「訓練」が大正新教育との接点を有しながら解釈されたことに注目した。加えて、戦時下に向けて「訓練」「訓育」に自律性や実践力が要求されていった状況を指摘し、これらの成果を論文にまとめた(『教育方法学研究』第33巻、掲載決定)。
|
Research Products
(4 results)