2006 Fiscal Year Annual Research Report
1930年代における教授方針の変容過程-大正期と戦時期との連続性の視点から-
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05J06179
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永江 由紀子 九州大学, 大学院人間環境学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 大正自由教育 / 大正新教育 / 訓練 / 訓育 / 1930年代教育史 / 山口県教育史 / 初等教育実践 / 奈良女高師附小 |
Research Abstract |
1.1930年代における教育言説の変容に関する検討 1930年代に全国的な教育ジャーナリズムでとりあげられた「新注入主義教育」論に着目し、教育史学会第50回大会(2006年9月17日、大東文化大学)で口頭発表した。この発表のために、複数の教育雑誌に掲載された記事を収集し、あわせて茨城県を中心とした史料調査を行った。新教育の無力性が当時の教育界で共通認識となり、身体的作業を伴う教育活動が重視されるようになったことを指摘した。同時にこうした教育実践が、全体主義・日本精神といった時代的要請に接続していく過程に注目した。大正期の新教育論者たちが、当該期には自由教育と適度な距離を保ち、教育の「中庸」を拠り所とする動きが、戦時下教育の構築を支えたと考えられる。 2.1930年代における「訓練」「訓育」の実態への着目 昨年度に引き続き、1930年代における大正自由教育の変容を考察するため、「訓練」「訓育」に着目しながら史料収集と論文作成にあたった。(1)地方教育行政・公立小学校の対応に関して山口県を例にあげ、大正末-昭和戦前期にかけて、自由教育の影響を受けた教育方法としての「自修訓練」が、道徳的陶冶に主眼をおいた「訓練」へと変容していく過程を、校長個人文書・地方新聞・教育会雑誌等を用いながら論文にまとめた(『飛梅論集』第7号、2007年3月)。(2)自由教育実践校としては、奈良女子高等師範学校附属小学校における1930年代の「訓練」「訓育」の解釈について学校文書・当校の機関誌等から分析し、日本教育方法学会第42回大会(2006年10月1日、福島大学)で口頭発表を行った。以上の研究成果から、1930年代に教育方法の改善から「訓練」そのものへと教育目的が転換し、初等教育現場では児童による学習内容の自律的実践が促されていくことが明らかになった。
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Research Products
(2 results)