2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J06180
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土肥 勲嗣 Kyushu University, 大学院・法学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ダム建設問題 / 公共事業 / 河川政策 / 政治参加 / 市民運動 |
Research Abstract |
これまで実施した研究の成果は以下の2点にまとめることができる。 1.本研究で扱った川辺川ダム開発の事例は、一度決定されると見直しが困難といわれる大型公共事業としては逸脱した事例である。本研究では、1960年代に下された川辺川ダム計画の決定が、1990年代以降、なぜ覆されたのかという問いを実証的に解明する作業を行った。そのため、具体的には、ダム開発の見直しの舞台となった住民討論集会および新利水計画策定に焦点を当て、資料収集、関係者への聞き取り調査、他の事例との比較研究を実施した。その結果、ダム計画の見直しを求める住民団体・市民団体による異議申立てが、ダム開発を進めてきた中央省庁と自治体の関係を変容させたことを解明し、研究論文「川辺川ダム建設をめぐる政治過程-公共事業と政治参加の研究-」を作成した。 2.本研究の意義は次のようにまとめることができる。すなわち、第一に、開発政策が行き詰っていく1990年代以降においても、中央省庁と自治体を中心としてダム開発を推進する政治構造を可視化したことである。第二に、地域社会における住民および市民が、政治参加の要求を高めることによって、政治家および自治体を巻き込む形で、大型公共事業という公共政策の決定主体へと変わっていったことを確認できたことである。以上のように、川辺川ダム開発をめぐる政治過程は、住民および市民が政策決定の主体として影響力を行使しえた先駆的な事例として位置付けることができるだろう。
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