2006 Fiscal Year Annual Research Report
酸化物結晶の照射損傷過程に及ぼす電子励起および電場の効果
Project/Area Number |
05J06199
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 知一 九州大学, 大学院工学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 照射損傷 / イオントラック / 電子励起 / スピネル型酸化物 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き、岩石型プルトニウム燃料や核変換処理の不活性母材の候補材料であるマグネシア-アルミネートスピネル酸化物に対して原子力研究機構のタンデム加速器を用いて、高速重イオン照射実験を行った。照射実験は、イオントラック同士が重なることによる効果を調べるため、昨年度よりも1桁程度大きな照射量にて行った。透過型電子顕微鏡による照射試料の組織観察により、2つのイオントラックが重なりあった場合、イオントラックの中心間に強い歪みが形成されることがわかった。また数回のイオントラックが重なりあうような照射条件においても、非晶質化することなく結晶性が保たれることを明らかにした。 またMorookaらにより報告されている2体間ポテンシャルを用いてスピネル完全結晶、不規則スピネル構造、アモルファス構造、イオントラックの中央部に観察される岩塩型構造の格子エネルギーの計算を行い、それぞれの構造の安定性を比較した。格子エネルギーは、アモルファス構造、岩塩型構造、不規則スピネル構造、完全結晶の順に大きく、岩塩構造はアモルファス構造よりも安定であることがわかった。また点欠陥の形成エネルギーについても計算を行い、陽イオンの格子間原子はFCC構造の酸素副格子の四面体位置に位置するよりも八面体位置に位置する方が安定であることを明らかにした。さらに、陽イオンのフレンケル対を数ピコ秒の時間間隔で導入しながら分子動力学計算を行ったところ、導入フレンケル対の増加に伴って、まずはイオン配列の不規則化が起こり、その次に岩塩構造が出現することが確認された。これらのことから、拡散により再結合が起こるよりも短い時間に多数のフレンケル対が導入された場合に、岩塩構造が現れることが示唆される。
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Research Products
(3 results)