2006 Fiscal Year Annual Research Report
複合物性発現を指向した錯体磁性体を基盤とする強磁性-強誘電性共存系の構築
Project/Area Number |
05J06216
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
兼子 和佳子 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 分子磁性体 / シアノ架橋 / 強磁性 / フェリ磁性 / 強誘電性 / 磁気異方性 / マルチフェロイクス / キラル磁性体 |
Research Abstract |
本研究は、錯体磁性体を基盤とした、光・磁気・電気の特性の相関による「複合物性」の発現、特に磁性と誘電性が共存・連動する系の構築を目的としている。 昨年度に、光学活性な補助配位子を用いたMn(II)Mn(III)混合原子価キラル磁性体[Mn(HL)][Mn(CN)_6]・2H_2O(L=(S)-1,2-diaminopropane(1),(R)-1,2-diaminopropane(2))の合成に成功した(空間群は共にP2_12_12_1)。1,2の交流磁化率は、磁気相転移温度(T_c)近傍で通常のバルク磁性体では見られない異常な周波数依存を示した。本年度は、ラセミ体の補助配位子を用いた対照化合物を合成し、1及び2との比較から磁気挙動に対するキラリティの影響を検討した。 本年度の取り組みにより、[Mn(HL)][Mn(CN)_6]・2H_2O(L=1,2-diaminopropane(3))の単結晶化に成功した。3のX線構造解析により、1,2と同一の二次元構造の構築を確認したが、空間群は反転対称のないP2_1/mであり、Mn(II)の軸位で補助配位子のS体とR体がディスオーダーしていた。磁気測定から3が低温でフェリ磁性体となることを確認し、T/cを20.8K、保磁力(H_c)を650Gと決定した。1及び2の結果(どちらもT_c=21.2K ; H_c=150G)との違いは、補助配位子のディスオーダーによる磁区構造の乱れなどによるものと考えられる。交流磁化率測定では、3も周波数依存を示したが、その応答温度や相対強度は1,2との相違が見られた。今後は1-3について、中性子回折やμSRによる磁気スピン秩序の確認や、非線形磁化率、誘電率測定などを行う。また、アキラルな補助配位子を用いた類縁体を合成し、磁気異常に対するキラリティの影響を考察する。
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Research Products
(4 results)