2006 Fiscal Year Annual Research Report
単一分子デバイスの機能制御と量子輸送過程に関する理論的研究
Project/Area Number |
05J06221
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野崎 大二郎 九州大学, 先導物質化学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 分子エレクトロニクス / ランダウアモデル / グリーン関数 / 量子輸送過程 |
Research Abstract |
近年、分子エレクトロニクスに関する研究が盛んに行われている。単一分子デバイスによる超高速情報技術を確立するためには、まず単分子レベルでの分子の電子構造と輸送特性の相関を明らかにする必要がある。これらのデバイスにおける電子伝導を表現する理論の多くはランダウアが確立した理論にその基礎を置いている。しかし、ランダウアの理論は基本的に輸送電子が原子核とエネルギー交換を行わないコヒーレントな伝導を仮定しており、非コヒーレントな散乱効果を取り込んだ理論による電気伝導の評価はあまり行われていない。DNAなどでは長距離光電子移動反応が多数報告されており、DNAの損傷の修復や触媒反応に深く関与すると言われている。電界注入による分子接合における電荷輸送でも、分子長の長い分子デバイスや多分岐の電極を持つ分子では、非コヒーレントなあるいは非弾性散乱を伴う電気伝導が大きく影響を及ぼすとされており、分子デバイスの集積に関してこれらの効果を取り込んだ電気伝導の評価は今後の分子エレクトロニクスの発展に不可欠と思われる。そこで、本研究では非コヒーレントな散乱効果をD'amato-Pastawskiモデルにより取り込み、様々な分子長や共役系の分子接合の電気伝導を評価した。 一連の分子ワイヤーからなる分子接合に対しこのモデルを適用した。コヒーレントな伝導と外界との摂動を繰り込んだ非コヒーレントな伝導を、仮想電極と分子との間の電子の交換速度をパラメータとして評価した。その結果、分子接合における電子の支配的な伝導機構が、コヒーレントな伝導から、距離に対して逆数的な依存性をもつインコヒーレントな伝導へと移行する様子をとらえることができた。本研究により、分子接合で考えられている様々な伝導機構のうち、Resonant伝導とOff-resoannt伝導とオーミックな伝導のパラダイムシフトを理論的に示すことができた。
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Research Products
(2 results)