2006 Fiscal Year Annual Research Report
プリオンタンパク質のモリブデンによるコンホメーション変化誘導の構造要因解析
Project/Area Number |
05J06223
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
横谷 聡 九州大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | プリオン / タンパク質 / モノクローナル抗体 / 遷移金属イオン / コンホメーション変化 |
Research Abstract |
狂牛病(BSE)に代表されるプリオン病の主因はプリオンタンパク質の構造変化であるとされている。プリオンタンパク質N端領域に存在するオクタペプチドリピート(以下、OPR)の遷移金属イオンへの配位がプリオンタンパク質の構造変化の要因の一つであると指摘されている。本研究では、遷移金属へのOPRの配位によるOPRの部分的な構造変化がプリオンタンパク質全体の構造変化を誘発するのではないかという着想に基づき、その詳細なメカニズムや構造要因の解明を目的として、以下のような実験を実施した。 昨年度までにOPR特異的モノクローナル抗体を用いた、金属イオン結合によるOPRのコンホメーション変化を感知する試験系の構築に成功し、OPRペプチドに対して5価のモリブデンが銅(II)イオンよりも強く結合することを発見した。今年度はOPRの構造変化をタンパク質レベルで解析するために、プリオンタンパク質N端ドメイン(23-100位)を大腸菌で発現させた。得られた発現タンパク質に対する銅(II)イオンの結合を、既に構築した試験系により解析した結果、添加した銅(II)イオン濃度に応じた抗体応答の低下が観察され、プリオンタンパク質が銅(II)イオンと結合することがわかった。さらに、プリオンタンパク質においてもすでに構築した試験系が適用でき、この試験系によってプリオンタンパク質と遷移金属イオンの結合を解析可能であることが判明した。現在、その他の遷移金属イオンについても解析中である。 また、用いた2種類の抗体のうちの1つを用いた結合試験において、OPRペプチドと銅(II)イオンの結合を詳細に調べたところ、結合曲線に二相性がみられた。その他の数種類の金属イオンついても同様であった。このことから、OPRと金属イオンの結合には少なくとも2種類の結合様式があることが考えられた。この結果は最近の研究報告と一致するものである。
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