2006 Fiscal Year Annual Research Report
海洋生物の生活史進化の理論的研究:空間的・時間的に大きく変化する環境への適応
Project/Area Number |
05J06253
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
入江 貴博 九州大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 進化生態学 / 生活史 / 海洋生物 / ベントス / タカラガイ / 貝殻 / 体サイズ / 飼育実験 |
Research Abstract |
入江は沖縄本島を基点に、潮間帯棲腹足類タカラガイ(Cypraea属)に見られる体サイズやそれ以外の生活史形質に関する集団間表現型地理的変異を進化生態学の観点から研究している。2005年度までに繰り返し実施されている野外調査によって、沖縄本島においてはハナビラダカラの体サイズは水深の浅い生息地ほど小さく、また同種個体密度の高い場所ほど小さくなることが判明している。2006年度上半期には、ハナビラダカラの成貝に関して、野外において体サイズ依存的な死亡率の違いが存在するかどうかを直接的に検証するために、夏をはさんだ標識再捕調査を行った。また11月からは体サイズのまったく異なる個体を産する沖縄本島の2個体群から得られたハナビラダカラの稚貝を室内の同一環境で飼育する実験を行った。その結果として、少なくとも沖縄本島内で観察される体サイズの個体群間変異は、空間的な環境の違いを反映した表現型可塑性の産物であることが判明した。対外的な活動としては、2006年度はアメリカ合衆国のStony Brook大学で開催された「Evolution2006」と、九州大学で開催された「数理生物学会日韓合同大会」というふたつの国際学会で、研究成果を発表した。また国内の学会では、4月に東京で開催された日本貝類学会大会と8月に東京で開催された日本進化学会大会において研究成果を発表した。また、3月に松山で開催された日本生態学会大会では、「生活史研究における問題点:海洋性ベントスの場合」というシンポジウムをオーガナイズし、海洋性ベントスの生活史進化を研究する上での理論的研究の重要性を訴えた。
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Research Products
(2 results)