2006 Fiscal Year Annual Research Report
偏性嫌気性細菌におけるテトラクロロエテン脱ハロゲン化呼吸に関する研究
Project/Area Number |
05J06275
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
二神 泰基 九州大学, 大学院農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Desulfitobacterium / 脱ハロゲン / クロロエテン / クロロメタン |
Research Abstract |
Y51株はクロロエテン脱塩素化細菌であるが、これまでの研究で、Y51株をMMYPE液体培地で培養すると脱塩素化能を失った株(欠失株)が出現するという現象が観察された。これらの欠失株は、SD(small deletion)株とLD(large deletion)株の2タイプに分類された。SD株は脱塩素化酵素をコードするpceA遺伝子の上流約1.6kbを欠失しており、その領域にpceA遺伝子のプロモーター-35領域(TTGACA)が含まれていたためにpceA遺伝子が転写されず、脱塩素化能を失った。一方、LD株はpceA-B-C-T遺伝子群を含む約6.5kbを欠失していた。 本年度はまず、市販されているテトラクロロエテン、トリクロロエテン(TCE)、cis-1,2-ジクロロエテン(cis-DCE)などのクロロエテン類がY51株に及ぼす影響を調べた。その結果、cis-DCE(5mM)存在下でY51株を継代培養するとLD株が高頻度(>80%)に出現するという現象を見いだした。しかし、師範のcis-DCEには約0.62%mol/molという高濃度のクロロフォルムが混入しており、LD株の高頻度出現がcis-DCEではなくクロロフォルム(≧1μM)により引き起こされることを明らかにした。なお、Y51株によりTCE(クロロフォルムが混入していない)をcis-DCEに変換し、これがLD株の高頻度出現を引き起こさないことを確認した。また、クロロフォルムによりLD株が高頻度に出現する原因は、Y51野生株がクロロフォルムにより生育阻害を受けるのに対して、欠失株が阻害を受けないためであった。すなわち、クロロフォルム存在下ではY51野生株から生起する欠失株が優先種となることが明らかになった。また、クロロフォルムと同様の作用が4塩素化メタン(≧1μM)にも観察されるが、一方2塩素化メタン(1mM)では観察されないことが分かった。
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Research Products
(1 results)