2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J06293
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
鈴木 貴之 首都大学東京, 都市教養学部人文・社会系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 自然主義 / 物理主義 / 意識 / クオリア |
Research Abstract |
本年度は、おもに二つの問題にかんして研究を行った。初年度に研究を予定していた哲学的自然主義の定式化と、第二年度に研究を予定していた人間の自然主義的理解における中心的課題の一つである、意識の自然化である。これらの研究の成果は、本年度に東京大学に提出した博士学位論文「表象理論にもとづく現象的意識の自然化」としてまとめられている。 本年度の具体的な研究成果は以下の通りである。まず、第一の哲学的自然主義の定式化にかんしては、上記学位論文の第一章において詳細な検討を行い、以下のことが明らかになった。哲学的自然主義とは、世界にはミクロ・マクロという階層構造が成り立ち、マクロな存在者のあり方はよりミクロな存在者のあり方によって必然的に決定されると考える立場である。ミクロ物理的な存在者を基礎としてあらゆる存在者を統一的に理解することを目指すのが哲学的自然主義なのである。 第二に、意識の自然化にかんしては、上記学位論文の第二章以降において詳細な検討を行い、その結果次のようなことが明らかになった。われわれの意識経験はすべて一種の知覚、いいかえれば外的世界の表象として理解可能である。したがって、表象を自然主義的に理解することを手がかりとして、意識の自然化が可能になる。このような理論、すなわち意識の表象理論によれば、われわれが意識経験を有することは、われわれの脳が世界を表象することとして、自然主義的な世界観のなかで理解可能なのである。 以上が本年度の研究成果であり、これらの研究成果は、さらなる検討を行ったのちに来年度以降研究論文などの形で発表を予定している。
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