2006 Fiscal Year Annual Research Report
都市域・都市郊外地域におけるヒドロキシルラジカルの大気寿命
Project/Area Number |
05J06324
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
西田 哲 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 大気化学 / 対流圏オゾン / ヒドロキシルラジカル / 大気寿命 |
Research Abstract |
本研究では未だ明らかになっていない都市域、都市郊外地域におけるヒドロキシルラジカルの消失過程に関与している化学種を明らかにすることが目的である。そのために春季には都市郊外地域にあたる東京都八王子市の首都大学東京構内でヒドロキシルラジカルの大気寿命測定を行った。また、夏季には北海道苫小牧市の北海道大学苫小牧研究林でヒドロキシルラジカルの大気寿命測定を行った。これは植物起源物質が豊富な森林内での寿命測定を行うことにより、植物起源物質が大気寿命に与える影響の知見を得るためである。苫小牧研究林では都市郊外域と比較すると大気寿命は0.05〜0.3秒と長く、昼に短く、夜に長い傾向にあることがわかった。今回の観測ではヒドロキシルラジカルの大気寿命への人為起源物質の寄与は小さく、森林内での大気寿命は主に植物起源物質によって支配されていることがわかった。また同時に測定した他の化学種の濃度と反応速度定数の積の和から求まる大気寿命の計算値と実測値には差が生じていて、その差も昼に大きく、夜に小さいことがわかった。これは、太陽光強度や温度に濃度が依存する物質で今回、同時観測しなかった物質がヒドロキシルラジカルの反応相手として有意に存在しているということを表している。その候補としては、温度、太陽光強度依存があることから、人為起源物質ではなく植物起源物質か、植物起源物質が大気中で光化学反応により酸化されて二次的に生成したアルコールやケトンなどが考えられる。今後、詳細な解析を行い、観測できていない植物起源物質およびその二次生成物がどの程度ヒドロキシルラジカルの大気寿命に影響を及ぼしうるかを検討し、都市域、都市郊外域での観測を行っていない植物起源物質の影響がどの程度になるかを推測することができるようになると考えられる。
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Research Products
(1 results)