2005 Fiscal Year Annual Research Report
充填スクッテルダイト化合物の純良単結晶育成と特異結晶構造の生み出す新物性の解明
Project/Area Number |
05J06393
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
菊地 大輔 首都大学東京, 理学研究科物理学専攻, DC1
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Keywords | 充填スクッテルダイト化合物 / 強相関電子系 / 希土類化合物 / 単結晶 / 試料育成 / 重い電子系 / フェルミ面 / 熱電材料 |
Research Abstract |
充填スクッテルダイト化合物SmRu_4P_<12>はT_<MI>=16Kで金属絶縁体転移を示し、さらにT_N=14Kで磁気転移することが報告されており、その起源は未解明である。同じ結晶構造で希土類元素がPrに置き換わったPrRu_4P_<12>が同様に金属絶縁体転移をすることからよく比較される。両者の違いは、PrRu_4P_<12>の転移が構造相転移を伴った非磁性的なものであるのに対し、SmRu_4P_<12>では磁気的であることである。また、PrRu_4P_<12>の金属絶縁体転移は構造相転移によるフェルミ面のネスティングによることがわかってきた。これまでに我々は、SmRu_4P_<12>とPrRu_4P_<12>のホール係数が、室温では共に正値であるのに対し、基底状態ではその符号が異なり、相転移後の電子状態が異なることを報告してきた。 今回新たに高圧合成した多結晶試料SmRu_4P_<12>を用いて熱電能の温度依存性を測定した。SmRu_4P_<12>の熱電能は低温で正の値を示すことが明らかになり、ホール係数の結果と矛盾せず、相転移後の電子状態がSmRu_4P_<12>とPrRu_4P_<12>とでは異なることを確認した。 一方、SmRu_4P_<12>は磁場温度相図がCeB_6とよく似ていることから多重極秩序の可能性が示唆され議論を集めているが、確証が得られていないのが現状である。秩序変数に関する知見を得るために、フラックス法で育成した単結晶試料を用いて磁化および比熱の異方性の有無を調べた。磁化の変曲点(T_Nに対応)から決定した磁場温度相図に顕著な異方性が確認された。また、4T付近で磁化の変曲点の温度が最大値を持つことがH//<100>で特に明瞭である。一方、T_<MI>では異方性は観測されなかった。これらの異方性は単結晶を用いた比熱測定でも同様に観測された。
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Research Products
(1 results)