2007 Fiscal Year Annual Research Report
充填スクッテルダイト化合物の純良単結晶育成と特異結晶構造の生み出す新物性の解明
Project/Area Number |
05J06393
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
菊地 大輔 Tokyo Metropolitan University, 理学研究科・物理学専攻, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 充填スクッテルダイト化合物 / 強相関電子系 / 希土類化合物 / 単結晶 / 試料育成 / 磁場に鈍感な重い電子 / ドハース・ファンアルフェン効果 |
Research Abstract |
新奇物性が次々と報告されている充填スクッテルダイト化合物群において、系統的な研究を行うことの意義は大きいが、As系充填スクッテルダイト化合物の研究は試料合成の困難さから、PやSbを含んだ系と比べて遅れていた。私は高圧合成法によりSmFe_4As_<12>の多結晶試料の育成に成功し、39Kで強磁性転移することを明らかにした。更に、近藤効果的な異常を電気抵抗測定において観測し、SmFe_4P_<12>、SmOs_4Sb_<12>、SmRu_4P_<12>の結果と系統的に比較して同様の振る舞いの存在を確認し、Sm系充填スクッテルダイト化合物に共通した機構であることを指摘した。 SmFe_4P_<12>は重い電子系強磁性体として注目を集めているが、フェルミ面の決定もなされていない。私はこの物質の電子構造を明らかにするため、ドハース・ファンアルフェン(dHvA)効果、横磁気抵抗効果、ホール効果を用いた研究を行い、4つの新たな知見を得た。(1)第47バンドフェルミ面のサイクロトロン有効質量(m_c^*)が、球状にも関わらず異方的である。この起源は現時点では未解明である。(2)m_c^*の磁場依存性が小さい。この特徴は、同じくSmを基にした充填スクッテルダイト化合物で重い電子強磁性体であるSmOs_4Sb_<12>の電子比熱係数が磁場に鈍感であることと類似しており、これら二つの物質を比較することが極めて重要であることを指摘した。(3)横磁気抵抗の磁場依存性が磁場に対して2乗で増加する振る舞いをすべての磁場方向で観測した。このことは通常の非補償金属の横磁気抵抗では説明がつかない異常である。(4)低温でのホール係数が室温での値と比べて4倍に増加することが明らかになった。これら(3)と(4)の異常は、dHvA効果で観測されていないm_c^*の大きなフェルミ面があることが予想されているという事実を考慮し、2バンドモデルで解析することで、半定量的に理解することができた。
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Research Products
(4 results)