2005 Fiscal Year Annual Research Report
精密な相対論的電子状態理論の開発と重原子化合物の磁気物性と励起状態への応用
Project/Area Number |
05J06399
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
谷村 景貴 首都大学東京, 大学院・理学研究科化学専攻, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 相対論的効果 / 電子相関 / NMR / 磁気化学 |
Research Abstract |
1.いくつかの代表的なカルボニル錯体のNMR化学シフトを計算し、配位子の構造などによるシフトへの影響、各金属における化学シフトの傾向を見出すことを目的とした。各錯体の中心金属はCr,Fe,Cu,Znである。 例外も見受けられるが、Cr,FeではCOより高磁場、Cu,Znでは低磁場に化学シフトの値が算出され、金属ごとの傾向が見られた。これはCu錯体はCOガスのピークより低磁場に、Fe錯体は高磁場にシフトするという実験報告を再現している。配位子による傾向を見ると、ポルフィリンが関わった場合は金属の種類による高磁場・低磁場の区別が他の2種より明確でなくなった。遮蔽定数は、反磁性項では錯体ごとの大きな変化はなく、常磁性項の変化が化学シフトの変化を支配していた。また、AOの寄与を分析したところ、どの錯体についてもC・O原子のp軌道が大きく関わっていた。 2.工業的に利用される種々のMnカルボニル錯体の^<55>Mn-NMR化学シフトを計算し、実験値との比較を行うと共に、電子相関と相対論的効果が各化合物の化学シフトにもたらす影響を考察した。対象分子は、Mn(CO)_5X(X=H,F,Cl,Br,I,CH_3)である。 計算の結果、電子相関の主要な影響が常磁性項に現れることがわかった。一方、比較的軽い原子(X=H,F,Cl,CH_3)を配位子とした分子では、HFとMP2の両計算方法ともに実験値の傾向良好に再現していた。スピン-軌道(SO)相互作用を考慮した場合、電気陰性度の大きな原子を配位子にもつ分子ほど計算結果に変化が見られた。このことから、SO相互作用は電気陰性度と何らかの相関があると推測される。また、遮蔽定数を解析した結果、これらの分子の化学シフトの主要因項が常磁性項であり、それが主に3dπ→3dσ遷移に起因していることを明らかにした。
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