2005 Fiscal Year Annual Research Report
国際関係理論の歴史的再検討-E.H.カーの思想と行動を事例として-
Project/Area Number |
05J06444
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
山中 仁美 津田塾大学, 大学院・国際関係学研究科, DC2
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Keywords | E・H・カー / 国際関係論 |
Research Abstract |
普遍的かつ自明なものとしてその位置を正統化されてきた既存の国際関係理論に、現実の国際関係をめぐる歴史的・思想的コンテクストの中から紡ぎ出されてきた動態的な認識枠組としての光を当てることを目的とした本研究の本年度の実績は、以下の通りである。まず、本年度の中心課題であった資料の収集および分析として、英国の王立国際問題研究所において、1940年代前半に開かれた国際政治に関する講演会やワーキング・グループの詳細を把握する議事録等を読み込んだ。これにより、国際関係論の初期においてイギリスの国際関係学者が有した一定の共通認識(ヨーロッパのナショナリズム高揚に対する警戒感など)が明らかとなった。また、同研究所においてイギリスの国際関係に関する学問的研究が発展を遂げ、第二次世界大戦期には開戦後の早い段階から戦後世界についての議論が活発におこなわれ、それに伴い理論的枠組の構築が目指されていたことが分かった。さらに、本研究が事例とするE・H・カーの思想と行動に関する新しい発見が、同研究所の資料を分析することによって得られた。すなわち、同資料を用いることによって、カーが、「新しいヨーロッパ」という言葉に象徴させたヨーロッパ戦後構想における、社会・経済改革の重要性や、ヨーロッパの機能的な統合をめぐる議論が、イギリス国内外の歴史的・知的文脈の中に位置づけられたのである。なお、本研究の成果は論文にまとめられ、平成18年度に刊行される国際政治の専門誌に掲載予定である。
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