Research Abstract |
変動地形の定量的解析を行うには,山地の隆起過程および内陸盆地の形成過程と断層の幾何学的特徴との対応関係を明確にする必要がある.本研究では,奥羽山脈・真昼山地西麓横手盆地東縁断層帯を研究対象として,変動地形調査,地質調査,反射法地震探査などによって地表から地下の断層構造を詳細に明らかにした.そしてこれらの断層構造を基にバランス断面法による構造解析を行い,変動崖と丘陵・山地の形成過程,短縮量・隆起量とその変位速度・変位様式などを明らかにした. 本断層帯主部を構成する白岩断層,太田断層,千屋断層を横断する反射法地震探査の結果,いずれの断層も東傾斜の逆断層であり,地表から少なくとも地下約1kmまでは深度の違いはあるもののflat-ramp構造を持つ複数の逆断層から構成されていることが明らかとなった.また,白岩断層・千屋断層は,山地境界の境界断層(川口断層)から盆地側へ前進してきた前縁断層であるが,そのすべり面の深さは地質の違いによること,湾曲・雁行など地表トレースの複雑な形態は,地下の断層面の深度と形状を反映していることが明らかとなった. さらに,バランス断面法を用いて,断層変位量の収支や形成過程を検討してみると,1896年陸羽地震時の断層変位量や段丘面の変形から求められるすべり速度は北へ減少するのに対し,さらに長期的な時間スケールでは,すべり速度が北部で速くなるという特徴が認められた.段丘面の変形は前縁断層に伴う断層変位を表現するものであることから,前縁断層の構造が1896年陸羽地震時の断層変位に大きく寄与したことは確かである.また,長期間のすべり速度の空間的な変化は真昼山地の隆起パターンを支持しており,これは地下深部において,断層変位の分配が生じている可能性が高いこと,その分配にも地質構造が深く関係していることを見いだし,この関係についての隆起モデルを地下の構造から検証した.
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