2006 Fiscal Year Annual Research Report
冬季の土壌からの亜酸化窒素発生機構の解明を目指した土壌微生物生態学的アプローチ
Project/Area Number |
05J06518
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
柳井 洋介 東京農工大学, 大学院生物システム応用科学府, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 土壌 / 凍結融解 / 亜酸化窒素 / 脱窒菌群集 / 氷温培養 / 部分殺菌効果 / 不凍水 / 微小嫌気部位 |
Research Abstract |
温帯・亜寒帯地域において冬季に土壌から亜酸化窒素の多量の放出が起こることが知られており,土壌の凍結融解がその要因であるといわれている.凍結融解時に起こる亜酸化窒素の放出は脱窒過程で生成されるという報告が多数あるが,実際,凍結期と融解期のいずれで,また凍結期についても凍結した表層と凍結しない下層のどちらで有意な亜酸化窒素の生成が起こっているのかは明らかになっていなかった.昨年度,本研究で凍結した土で顕著な亜酸化窒素の生成が起こることを実験的に確かめた.そこで,凍結が亜酸化窒素生成を促進する要因を明らかにすることを目的に研究を行った.最大容水量の100%および150%(それぞれ飽和・過飽和)に水分量を調整した風乾土を凍結すると融解時に急激な亜酸化窒素の放出が起こったが,最大容水量の50%(不飽和)に水分量を調整した土壌では融解しても亜酸化窒素の放出は起こらなかった.また,不飽和の生土を蒸留水で飽和状態にすると,融解時に急激な亜酸化窒素の放出が起こり,また水分量を調整するときに炭素源を同時に加えることでその亜酸化窒素放出は顕著に促進された.しかし,炭素源が加えられている条件に硝酸イオンを添加しても,亜酸化窒素放出に変化は見られなかった.以上の結果から,土壌の凍結融解が引き起こす亜酸化窒素の多量の放出の機構として,「(1)孔隙に密に発生した氷晶が不凍水中に隔離された脱窒菌に対し酸素の供給を妨げる(2)部分嫌気部位の形成を促し脱窒反応を誘導する(3)亜酸化窒素が生成して土壌中に蓄積する(4)土壌が融解するときに大気へと拡散放出する」が考えられた.このことからフィールドにおける土壌の凍結状態と亜酸化窒素の蓄積との関連性について,(1)霜柱が立つ程度の土壌の凍結では亜酸化窒素の生成・蓄積は生じない,(2)数週間にわたって継続的に凍結する土壌では亜酸化窒素の生成・蓄積が起こる可能性がある,ということが考えられた。
|
Research Products
(3 results)