2006 Fiscal Year Annual Research Report
十八世紀フランスにおける科学・技術と公共事業-社会に「有用」な知をめぐって
Project/Area Number |
05J06689
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
隠岐 さや香 電気通信大学, 電気通信学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 科学技術史 / パリ王立科学アカデミー / 社会史 / 統計学史 / フランス / 国際情報交換 / 公共事業 |
Research Abstract |
年度前半は基本的にフランスに滞在し、調査の第二段階として科学アカデミーが関わった公共事業および発明審査における学者、技師、その他の政府役人などの役割分業、人材交流などに関連する資料を集めた。学者については、科学アカデミー古文書館における議事録の他、電子データの整理を行った。技師については国立土木橋梁学校図書館などを中心に資料を収集した。役人としては主に産業監督官およびパリ市の文化行政を管轄していた宮内省などを中心に国立古文書館などでの資料収集を行った。また、公共事業の事例研究のため訴訟資料や王令の資料、公衆衛生施設に関連する行政資料などを国立図書館および保健衛生施設古文書館で収集した。 年度後半は東京で資料の整理および神戸などで追加の調査を行った。その結果次のような知見が得られた。まず、1720年代から科学アカデミーと産業行政の中枢の間で交流が活発化し、その結果産業監督官と学者の間で人材交流が進む。40年代以後に組織化された各種技師社団についてはその代表者を会員に取り込む形でやはり関わりを作ったが、彼等は公共事業に関わる問題はアカデミー外で扱い、内部では政治、経済に関わる話をしないという方針を守っていた。70年代になると、これらの技術系官僚とは異なる流れを汲む啓蒙のフィロゾーフらがアカデミーに流入し私的な人間関係を通じて科学と政治の本格的な連携を模索するが、政権交代により一度は挫折する。しかし80年代に入り彼等の残した理想に合う形での科学アカデミーの制度的な改革が模索され、同時にいくつかの国家公共事業プロジェクトの審査員として学者(特に化学者と数学者)を積極的に登用する傾向が出てくるのである。 これらの成果はまず10月に途中経過報告も兼ねて国際会議Statistische Wissensbestande und Techniken der Herrschaft zwischen Aufklarung und 1848:Hervorbringung, Verbreitung und Implementierung, Deutsch-franzosischer Workshop an der Universitat Bielefeld(10/7)および社会思想史学会(10/22)でそれぞれ発表された。また、1月には病院移転事業の一例を題材に、伝統的な病院行政アクターに対する科学アカデミー学者の役割を論じた論文を執筆した。
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Research Products
(1 results)