2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J06848
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
村井 千寿子 Tamagawa University, 脳科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 物理的認識 / チンパンジー / ニホンザル / 期待違反事象課題 |
Research Abstract |
本研究では,チンパンジー・ニホンザルにおける物理的事象の認識について検討した.物理的認識はヒト乳幼児認知研究の主要な課題のひとつであり,その様相・発達過程については実験的示唆が多く得られている.対して,ヒト以外の霊長類,とくにマカク類,においては検討すべき点が多い.実験にはヒト乳幼児研究にならい注視時間を指標とした期待違反事象課題を用いた.この課題では,物理法則に合った正事象と法則に違反した違反事象とが提示され,被験体が違反事象に対して有意な選好を示すかどうかが評価される.本研究では,物理的支持事象における法則(対象は土台からの適切な支持を失うと,空中にはとどまらず落下する)の理解に焦点を当てた.とくに,支持事象の基本法則である「(1)対象と土台の接触の必要性」,そして事象におけるより詳細な属性である「(2)支持の方向性(対象支持における垂直方向からの土台による作用の必要性)」と「(3)接地量(対象と土台の十分な接地量の必要性)」の3点について検討した.京都大学霊長類研究所のチンパンジー7個体,同所および玉川大のニホンザル4個体を対象に実験を行った結果,両種において,(1)および(3)での違反事象への有意な選好が見られた.つまり,これらの事象における物理法則の認識を示す証拠が得られた.ただし,(2)についてはそのような証拠は得られなかった.これらの結果は,マカクを含むヒト以外の霊長類が外界の事象を物理法則にのっとって認識していることを示唆する.その一方で,ヒト以外の霊長類が部分的にヒトとは異なる認識を発達させた可能性が示された.その要因の解明については今後の検討が待たれる.ヒト以外の霊長類がどのように外界を認識し,外界に関するどのような知識を持つのか,またそれがヒトとどのように類似し,また異なるのかを種間比較研究を通じて明らかにすることで,ヒトの認知の特徴の更なる理解が得られると考える.
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Research Products
(3 results)