2007 Fiscal Year Annual Research Report
社会性昆虫の利他性に関わる遺伝子の分子進化に関する研究
Project/Area Number |
05J06852
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
北條 優 Tamagawa University, 農学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | セイヨウミツバチ / 記憶・学習 / キノコ体 / 遺伝子発現 / マイクロアレイ / タカサゴシロアリ / テルペン合成 / ディファレンシャル・ディスプレイ |
Research Abstract |
代表的な真社会性昆虫であるセイヨウミツバチのワーカーは羽化後の加齢に伴って仕事を変える事が知られている.この分業は脳キノコ体における学習能力の発達と関係していると考えられている.当研究室では,ワーカーを社会的環境から隔離した状態(独房)で飼育する事により,学習能力が発達しないミツバチ(独房蜂)を作出する事に成功している. ディファレンシャル・ディスプレイ法を用いて特定された,通常の学習能力が高いミツバチ(コロニー蜂)で特異的に発現するmajor royal jelly protein(MRJP)1遺伝子について詳細な発現解析実験を行い,記憶・学習能力の発達とこの遺伝子の発現が密接に関わっているという証拠をつきとめた,また,マイクロアレイ法により独房蜂とコロニー蜂の脳キノコ体での網羅的な遺伝子発現の比較を行い,有意に発現に差がある80個の遺伝子を特定した.これらのうち,特に興味深いいくつかの遺伝子について,リアルタイム定量RT-PCR法にて詳細な発現解析をし,記憶・学習能力の発達に関わっていると思われるいくつかの遺伝子を特定した. もう一つの真社会性昆虫の大グループであるシロアリ類においては,テルペン類を噴射する事により最も進化的な化学的防衛を行うタカサゴシロアリを用いて研究を行ってきた.全てのテルペン類はイソペンテニルニリン酸を前駆物質として,メバロン酸を経由して合成される事が知られている,今年度は,その合成経路の最も上流の遺伝子であるacetoacetyl-CoA thiolase遺伝子に焦点をあて,RT-PCR法,RACE法にて遺伝子全長のクローニングに成功した.またこの遺伝子は,いくつかのコピーが存在する事も確認でき,テルペン類を合成しないワーカーと防衛を行う兵隊では,発現している遺伝子コピーが異なる事も確認できた.
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