2006 Fiscal Year Annual Research Report
人間の音声に含まれる話者の個人性と音響学的特徴量との関連性について
Project/Area Number |
05J06901
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
網野 加苗 上智大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 音声の個人性 / 話者識別 / 鼻音 / 個人性知覚 / 法工学 |
Research Abstract |
聴取によって話者を識別する際の刺激音の影響を調査している。今年度は以下の3つのテーマに関して実験を行った。 (1)聴取者と話者の親密度の影響 今までの研究の中では、聴取者と知り合いの話者に関して個人性を識別させる実験を行ってきた。その中で、特に鼻音を含む音節を刺激音として呈示した際に話者識別の正答率が高くなることが明らかになったが、今年度はさらに聴取者と知り合いでない話者に関して被験者を募り、同様の実験を行った。 その結果、話者との親密度により正答率自体は大きく影響を受けたが、鼻音の有効性は保たれることが明らかになった。 (2)話者間の類似性知覚とその音響的対応 現在までに行った聴取実験の結果を再分析し、知覚における話者間の類似(音声が似ているという知覚)が何によるものなのかを調査した。その結果、音声のスペクトル距離と、話者を混同して回答した率の問には相関があることが分かった。さらに、鼻音を含まない音節では、母音部でのみ知覚との相関が高いのに対し、鼻音を含む音節では音節全体を通して相関が高く、聴取者が音節全体を話者性の判断に用いている可能性があることが示された。 (3)話者性が多く含まれる音声区間の調査 上記(2)のテーマと関連して、子音と母音から成る音節の子音部と母音部で話者が異なる音声刺激を作成し、聴取させた際にどのように話者性を知覚するのかを調べた。先行する子音の種類の関わらず、母音部の話者と回答する割合が高く、特にその傾向は鼻音が先行する母音の場合に強かった。 音響的には鼻子音に話者性が多く含まれることがこれまでに明らかになっていたが、鼻子音に後続する母音にはさらに知覚上重要な話者のキューが含まれる可能性が示された。
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