2005 Fiscal Year Annual Research Report
人間の音声に含まれる話者の個人性と音響学的特徴量との関連性について
Project/Area Number |
05J06901
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
網野 加苗 上智大学, 外国語学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 音声の個人性 / 話者識別 / 鼻音 / 風邪引き声 / ケプストラム距離 / 音節構造 |
Research Abstract |
音声信号中の話者個人に関する情報を調べるために、聴取実験及び音響分析を行った。話者性を多く含む音の種類を調べることにより、話者認識や音声認識などの技術に応用できると考えられる。 研究代表者による今までの研究において、鼻音には話者の特性が多く含まれることが分かっており、これをふまえて本年度は大きく分けて3つの研究及び成果発表を行った。 1.聴取実験においては、口音よりも鼻音を聞かせた場合に話者の識別がしやすかったが、音響特徴でも口音・鼻音間に違いが見られるのか 音声のスペクトル包絡に見られる特徴を観察するため、話者間及び話者内のケプストラム距離を求めた。その結果、鼻音では口音よりも話者内距離が小さく、話者間距離が大きいことが分かった。つまり、鼻音の共鳴特性には個人性が多く含まれることが分かった。 2.言語学的構造(音節構造)は、話者識別における鼻音の有効性にどのような影響を与えるのか 日本語の様々な音節構造を用いて話者識別の聴取実験を行った。その結果、鼻音は音節のonset位置においてもcoda位置においても口音よりも話者識別に有効であることが分かった。また、鼻音・口音の両方において、両唇音よりも歯茎音で話者識別がしやすいことが分かった。 3.鼻音は話者性を多く含む一方、風邪などの疾患の影響が大きいと考えられるが、その影響とはどのようなものなのか 5名の話者に関して、風邪引き時と通常時の母音・鼻音を録音し、スペクトルを比較した。その結果、鼻音のスペクトル包絡は風邪引きによって大きく形状が変化し、特にスペクトルが平坦になるという傾向が見られることが分かった。母音のスペクトルも同様に大きく変化したが、スペクトルの谷よりも山の位置や傾きが主に影響を受けることが分かった。
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