2005 Fiscal Year Annual Research Report
音声のバリアフリーに向けた残響環境下における音声明瞭度改善のための前処理
Project/Area Number |
05J06911
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
程島 奈緒 上智大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 残響 / 音声明瞭度 / 音声強調 / 拡声システム / 非母語話者 / 公共空間 / 前処理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ホール、講堂、駅構内、トンネル等の公共空間で様々な人に聞き易い音声を提供する「音声のバリアフリー」化を目指すことである。そのために、室内で音声聴取を低下させる原因である残響を、マイクロフォン・スピーカ間の前処理によって軽減する「定常部抑圧処理」の実用化を目指し以下の検討を行った。 非母語話者や高齢者は若者の母語話者より残響の影響を受けやすいことから、非母語話者や高齢者対する定常部抑圧処理の効果を調べた。英語を母語としない2言語群の話者48名、英語の母語話者24名に英語の単語の同定実験を行った。その結果、次の結果が得られた:1)非母語話者は母語話者よりも正解率が低くなった、2)処理の効果は今回の実験条件においては両話者間で有意な差が見られなかったが、定常部抑圧処理の効果は残響時間、話者、ターゲットの子音位置によって異なった。健聴・老人性難聴を持つ高齢者数十名に対して残響時間を模擬した環境、ホールの両方において単音節明瞭度試験を行った。その結果、両環境において定常部抑圧処理により高齢者の明瞭度は有意に改善した。 任意の室で処理の効果を最大に得る定常部抑圧処理のパラメータを把握するため、様々な残響条件下で定常部を抑圧する度合いを変えて聴取実験を行った。その結果、明瞭度が最大限に改善する抑圧率は残響条件によって異なり、抑圧率と正解率の関係は残響条件によらずほぼ一定であることが分かった。 聴取実験を行うことなく定常部抑圧処理の効果を予測するモデル構築のため、建築音響分野で用いられている音声明瞭度指標による検証を行った。また聴取位置・拡声システム・室の建築的要素を変化させたときの定常部抑圧処理の効果の検証を行うため、室内音響特性をシミュレーションし、定常部抑圧処理を施した音声に対する聴感の変化を調べた。
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