Research Abstract |
本研究では,蒸発抑制効果をもつ溝充填型ウォーターハーベスティングを提案し,乾燥地植林に有用な手法として確立することを目的としている.本年度は手法の持つ蒸発抑制効果を定量的に評価するため,大型土壌槽を用いた室内蒸発実験とそのモデル化を中心に研究を進めた.また,効果的な溝内充填物質を選定するため,実験では複数の溝内充填物質を用いて結果を比較した.実験結果より,本手法による流出水の浸透促進・蒸発抑制効果が確かめられ,また高透水性・大間隙の溝内充填物質ほど,その効果が高いことが明らかとなった.しかし,いくつかの大間隙充填物質では,溝周囲土壌の侵食が観察されたため,溝内充填物質の選定には,この点を考慮する必要がある可能性が示唆された. 実験結果のモデル化においては,既存のモデルHydrus2Dを用いた数値計算により,浸透過程における水分挙動が良好に再現された.蒸発過程の数値計算においても,Hydrus2Dにより水分挙動が概ね良好に再現されたが,蒸発量には実測と誤差が生じており,今後のモデル改良が課題となった. また室内蒸発実験と平行して,本年度の計画にあった,安価な水分センサーの塩分依存性と校正法に関する研究を行った.水分センサー出力値の水分・塩分依存性を表す校正式を探索し,塩濃度センサーの校正式と連立させて数値解を得ることにより,両センサーを用いた水分塩分の同時モニタリングの可能性が示された. さらに,計画上にはなかったが,当研究センターにおける拠点大学交流事業の調査地,中国黄土高原において,現地の退耕還林政策に使用されているウォーターハーベスティング「魚鱗坑」を調査する機会を得たため,新たに実験区を設け,通常の魚鱗坑や本手法と類似した改良型魚鱗坑を作成して,水分・温度センサー等による各種計測を開始した.現時点では十分なデータが得られていないため,来年度以降も調査を継続する予定である.
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