Research Abstract |
本研究は,蒸発抑制効果をもつ溝充填型ウォーターハーベスティングを提案し,乾燥地植林に有用な手法として確立することを目的としている.17年度は大型土壌槽を用いた室内蒸発実験を,18年度は中国黄土高原における圃場実験を中心に研究を進めた.これらを受け,本年度は,室内・圃場実験結果の取りまとめ及びそのモデル化を中心に研究を進めた.また,モデル化に際して必要となる土壌の物理・化学的特性の測定や,圃場実験に用いた誘電率水分計の温度・塩依存性の校正実験・研究を行った. 室内実験のモデル化においては,既存の2次元土中水分移動モデル等を用いて,浸透過程における実験結果が概ね良好に再現された.蒸発過程においては,減率蒸発段階での実測値と計算値の乖離がみられ,18年度に実施した熱力学的平行近似モデル研究の成果等を盛り込むことにより,蒸発速度予測モデルの精度向上が期待される.中国黄土高原での圃場実験における水分挙動・収支の解析結果からは,現地のウォーターハーベスティングが,その投入労力に見合うだけの水分貯留効果を有しておらず,砂利マルチとの組み合わせによる蒸発抑制や,設計変更による改良が有効であることが明らかとなった.圃場実験のモデル化については,後述の水分計の温度・塩依存性の校正手法の確立・研究に時間を要したため,現時点では十分に完了していない状況である.圃場実験については,ヨルダン科学技術大学からもデータの提供を受けており,今後とも圃場スケールでのモデル化研究を継続して進める予定である.誘電率水分計の温度・塩依存性に関しては,複数の土壌やプローブを用いた室内実験結果より,校正法の確立・理論的背景の解明が行われた.特に温度依存性に関しては,圃場実験結果への校正法の適用により,温度変化に伴う出力値の変動が大幅に解消され,正確な水分量決定による水分挙動解析が可能になった.
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