2005 Fiscal Year Annual Research Report
臨界期の分子機構-大脳皮質一次視覚野の眼優位可塑性とERK1/2の関わり-
Project/Area Number |
05J06959
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
高村 明孝 鳥取大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 眼優位可塑性 / 発達 / 視覚 / 臨界期 / ラット / ERK1 / 2 |
Research Abstract |
脳の発達には臨界期と呼ばれる生後の一時期が非常に重要であり、この時期の脳は経験や神経活動の変化によって、神経回路網を柔軟に変化させることができる高い可塑性を持つ。様々な分子の可塑性への関与が報告されているにも関わらず、臨界期と成熟期では何が異なり、なぜ臨界期でのみ高い可塑性が発現されるのか、その理由についてはまだ良くわかっていない。視覚系では臨界期に片方の眼を遮蔽すると、大脳皮質一次視覚野の神経細胞は遮蔽眼に対する反応性を失う(眼優位可塑性)。しかし、このような変化は成熟期の動物では見られない。私は臨界期形成メカニズムの解明を目指し、ラット一次視覚野のこの可塑性を臨界期可塑性のモデルとして用い、ERK1/2という分子に注目して研究を行った。もしERK1/2がこの可塑性の発現メカニズムに含まれるのであれば、片眼遮蔽によってこの分子の活性は変化し、しかもその変化は臨界期にのみ観察されるはずである。このような仮説の下に免疫組織化学染色法・ウエスタンブロッティング法を用いて、片眼遮蔽によるERK1/2活性への影響について観察を行った。その結果、片眼遮蔽によってERK1/2活性は、遮蔽眼入力領域で減少するという視覚入力依存的な変化を示したが、このようなERK1/2の活性調節は臨界期のみではなく成熟期の動物でも観察された。次に細胞内局在に注目すると、臨界期の動物では片眼遮蔽による核内でのERK1/2活性の増加が観察された。しかし、このような片眼遮蔽による核内でのERK1/2活性の増加は成熟期の動物では観察されなかった。これらの結果から、臨界期の可塑性発現に核内でのERK1/2活性が重要な役割を果たしている可能性が示唆され、さらには活性量の変化と核移行の増加に直接的な関連が見られないことから、ERK1/2核移行を直接制御する分子の可塑性発現への重要性が示唆された。
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