2006 Fiscal Year Annual Research Report
臨界期の分子機構-大脳皮質一次視覚野の眼優位可塑性とERK1/2の関わり-
Project/Area Number |
05J06959
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
高村 明孝 鳥取大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 眼優位可塑性 / 発達 / 視覚 / 臨界期 / ラット / ERK1 / 2 |
Research Abstract |
発達期の動物では、片方の眼を遮蔽(片眼遮蔽)することによって一次視覚野における可塑的変化が促され、皮質細胞は遮蔽眼に対する反応を失う(眼優位可塑性)。このような変化は、臨界期と呼ばれる生後発達の一時期のみに見られ、成熟期の動物では見られない。そのため、大脳皮質一次視覚野のこのような変化は発達脳の可塑性の代表例として広く研究されている。しかし、様々な分子がこの可塑性に関与していることが報告されているにもかかわらず、可塑性発現メカニズムについて不明な点は未だ多い。 ERK1/2は眼優位可塑性発現に必要であることが報告されている分子であり、私はこれまでに、免疫組織化学染色法・ウエスタンブロッティング法を用いて、ERK1/2の活性への片眼遮蔽による影響をラットー次視覚野において観察した。その結果、片眼遮蔽によって遮蔽眼入力領域でERK1/2活性が減少するという視覚入力依存的な変化を示した。しかし、このようなERK1/2の活性調節は臨界期のみではなく、成熟期の動物でも観察された。また、細胞内局在に注目すると、臨界期の動物では片眼遮蔽による核内でのERK1/2活性の増加が観察された。このような片眼遮蔽による核内でのERK1/2活性の増加は、成熟期の動物では観察されなかった。 さらに、この臨界期特異的な核内ERK1/2活性の増加の経時的変化について観察したところ、12時間の片眼遮蔽を行った動物ではその増加は観察されず、24時間の片眼遮蔽でその増加率は最大になり、3日間の片眼遮蔽でその増加率は低下していることが観察された。これらの結果は、臨界期の動物でERK1/2の核シグナルが片眼遮蔽によって一時的に増加することを示す。また、その時間経過は眼優位性の変化と似ており、臨界期の可塑性発現にERK1/2の核シグナルが重要な役割を果たしている可能性が考えられる。
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